国土交通省が週内にも、日本の港湾の復権を狙う国際コンテナ戦略港湾を指定する。だが指定しさえすれば、おのずからコンテナ貨物が集約され、世界の諸港と互角に競争できるというのだろうか。
船荷のコンテナ化で、日本の港の役割は下がった。二〇〇六年以来、コンテナ貨物取扱量はシンガポール、上海、釜山などが毎年世界一〜五位なのに、日本の港は二十位内にも入らない。アジア−北米、アジア−欧州の基幹航路就航の船がわが国を素通り、日本発着貨物は釜山などで積み替えられることも多い。
港湾行政当局や海運業界の危機感はうなずける。そこで、国際的な競争力強化を狙うのが、国際コンテナ戦略港湾の構想だ。京浜(東京、川崎、横浜)、伊勢湾(名古屋、四日市)、阪神(大阪、神戸)、北部九州(福岡、北九州)が立候補した。
有力なのは京浜と阪神である。たとえば京浜は東日本の貨物、とくに北米航路貨物は全国から集め、現在釜山で積み替えている貨物を横浜へ、と狙う。だが、指定されれば自動的に貨物が集約されるとも思えない。
最大の課題は、釜山と比べ約四割も高い港湾コストだ。荷役、入港料、水先案内を含めコスト全体の圧縮を迫られる。そのため、荷役に効率的なターミナル造成と一元的な運用、内航、鉄道、トラックによる貨物集散ルートの改善も必要である。
指定港湾への国の具体的な支援策はまだ明らかでない。削減傾向の港湾整備予算、たとえば岸壁の整備・改修が指定港湾に集中することは予想される。だが強権で指定港湾に貨物を集約するのは不可能だろう。荷主はコストで搬出入港を選ぶからである。
京浜、阪神以外の港でも対応策が進んでいる。名古屋港の飛島コンテナ埠頭(ふとう)では、無人の自動搬送台車と遠隔操作のタイヤ式ガントリークレーンで、積み降ろしを著しく効率化した。
貨物の搬出入や通関手続き時間の延長、最終的には二十四時間化など総合的な対策も要求される。当然、国交省以外の省庁との連携も必要になる。
世界的な物流の拠点となるハブ機能を持たせるのは、空港同様、港湾も容易ではない。総花式と決別し少数港湾を指定しても、成果を確かなものにするには、他港の実績も取り入れ、日本港湾の魅力を実感できるものにしないと、指定倒れに終わりかねない。
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