HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 04 Aug 2010 20:12:42 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:長寿社会の死角 敬老の気持ちはどこに:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

長寿社会の死角 敬老の気持ちはどこに

2010年8月4日

 百十一歳とされていた東京都内の男性がミイラ化した遺体で発見され、百十三歳のはずの女性も所在不明の状態にある。「最高齢者」の異様な事態に驚く。長寿者を敬う気持ちはどこへ行ったのか。

 女性の平均寿命は約八十六歳と世界一で、男性も約八十歳と世界五位。日本は世界に誇れる長寿大国である。百歳を超える人は増え続け、今や四万人を数える。

 ところが、都会の真ん中で「最高齢」「長寿」と敬われる人の生死さえ、判然としない現実が浮かび上がった。あまりに寒々しく残念だ。

 足立区の「百十一歳」とされてきた男性の場合は、三十年以上も前に死亡していた可能性があるという。遺体の一部は白骨化していた。司法解剖の結果、死亡時期も死因も不明だった。

 ただし、男性は長女夫婦らとの同居である。「三十数年前に自室に引きこもった」と家族は話しているが、様子をうかがうことはなかったのか。まさに現代の“怪”だ。男性の妻は二〇〇四年に死亡し、多額の年金が男性の口座に振り込まれ、今年夏に一部が引き出されていた。謎はいよいよ深く、警視庁の調べを待ちたい。

 介護保険を受けていないため、男性が「元気高齢者」と区から表彰されていたとも聞く。驚きは募る。発覚の発端は一月に、民生委員から「安否確認ができない」という区への相談だった。長期間にわたり生存確認が放置されてきたのだろうか。行政の対応にも疑問を抱かざるを得ない。

 「百十三歳」という都内最高齢女性も、住民登録している杉並区に住んでおらず、所在不明になっている。名古屋でも「百六歳」の男性の安否が分からないなど、各地で長寿の不明者が相次ぐ。

 一人暮らしの孤独死も絶えない今日だ。災害が起きれば援護が必要な人々でもある。顔の見えないお年寄りに気遣う“地域力”がどこへ行ったのかも気になる。

 行政側は「家族に拒まれると立ち入って調査できない」と限界を指摘するが、死亡届は戸籍法で定められた義務であり、怠れば過料に処される。国や自治体は実態把握を急いでもらいたい。

 年金受給者は約四千万人にものぼる。足立区のケースは年金詐欺の疑いもあるとされるが、不正があれば、返還時に加算金も課される。年金受給者を食いものにする人々がいないか、医療や介護の記録などを手掛かりに、関係官庁は徹底調査してほしい。

 

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