民主党の参院選惨敗を受けた「ねじれ国会」が幕を開けた。与野党が角を突き合わせるだけでは何も生まれない。国民生活に必要な政策の実現へ、与野党は信頼関係を築くことから始めてほしい。
参院本会議場の与党席は半分に満たない。民主、自民両党が攻守を入れ替え、約十一カ月ぶりの「ねじれ国会」の再現だ。
しかも、与党は衆院で三分の二に満たず、首相指名、予算、条約以外は与党単独で成立させられない「真性ねじれ」でもある。
新しい状況をどう打開し、国政の停滞を避けるのか。与野党が知恵を出し合わねばならない。
菅直人首相は記者会見で、ねじれ国会を「マイナスとばかりとらえるのではなく、与野党が合意する政策は、かなり困難を伴う政策でも実行が可能になると前向きに受け止めたい」と述べた。
念頭にあるのは、一九九八年参院選後のねじれ国会で、民主党など野党側が提出した金融再生法案を、小渕恵三首相がそのまま受け入れ、金融危機を回避した例だ。
首相は、民主党代表として倒閣に走らなかった当時の判断の正しさを強調し、今回も野党側に協力するよう求めたのだが、より重要なのは、与党側が野党提案を「丸のみ」した決断ではないか。
野党に譲歩を迫るのではなく、首相が、野党側の提案を受け入れる度量を見せる方が先決だ。
初当選組を迎えた参院では、議長に、民主党の西岡武夫議院運営委員長が選出された。
前議長の江田五月氏は、菅首相問責決議案などを採決せずに前国会を閉会し、野党側が与党寄りだと批判して交代を求めていた。
民主党がこれまでの国会運営の不手際を陳謝し、議長交代を受け入れたことは、与野党間の信頼構築に向けた前進と受け止めたい。
ただ自民党は、西岡氏が議運委員長として三年間続けた強硬な国会運営は承服できないとして、議長選挙では白票を投じた。
自民党の言い分も分からないではないが、報復合戦が続けば、国民はいずれ愛想を尽かす。
西岡氏は選出後「新たな局面を迎えた(参)院の円滑な運営に努めたい」とあいさつした。その言葉を違(たが)えず、議事運営を通じて野党側の信頼を得るしかあるまい。
参院選で改選第一党になった自民党は参院で議運委員長ポストを取り戻した。国会運営の要だ。自らが担う責任も、より重くなったと肝に銘じるべきである。
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