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2010年8月2日(月)付

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さまよう外交―今こそ指令塔が必要だ

めまぐるしく変化する世界情勢は、緩慢な外交を許さない。だが、民主党政権の「政治主導」は外交面でも看板倒れの状態が続く。鳩山前政権からの弱点だったが、菅直人首相に代わっても迷走感がぬぐえない。[記事全文]

コソボ「独立」―国境なき時代の国境

「独立」。これほど人々の心を燃えたたせてきた言葉はない。しかし、グローバル時代の今日、これほど人々の目を現実からそらしかねない言葉もあまりない。旧ユーゴスラビア・セルビ[記事全文]

さまよう外交―今こそ指令塔が必要だ

 めまぐるしく変化する世界情勢は、緩慢な外交を許さない。だが、民主党政権の「政治主導」は外交面でも看板倒れの状態が続く。鳩山前政権からの弱点だったが、菅直人首相に代わっても迷走感がぬぐえない。

 このままでは国際社会の中で日本の利益を確保する力が衰えていくのではないか。懸念せざるをえない。

 例えば日韓関係である。今月29日は韓国併合条約発効から100年。歴史問題が解消したわけではないが、最近は良好だ。歴史の節目を生かし、新たな関係にどう進化させるかが課題である。そんな観点からすると、政府が防衛白書の発表を急に9月以降へ延期したことには首をかしげる。

 韓国の哨戒艦沈没事件をめぐる最新の動きを盛り込むことなどを延期の理由にあげているが、別の判断もあったようだ。白書は、竹島を固有の領土と記してきた。韓国側が抗議するのが通例で、100年の日を前に摩擦を避けようとしたとされる。

 韓国内の対日感情への配慮も必要だろうが、白書の発表延期のような小手先の対応で日韓のきずなは強まらない。竹島問題での不一致を抱えながらも、大局からアジアの未来を見つめ、二国間の信頼を深める決意と行動計画が求められる。首相の言葉からは、そこが見えてこない。

 核不拡散条約に入らずに核武装したインドと原子力協定の交渉に入ったのも、熟考が足りない。成長戦略重視の菅政権は原発輸出をその一つに位置付け、欧米などを追った。

 しかし、それでインドの原発が増え、ウラン産出国が原発用に輸出するようになれば、インドは自国産ウランを軍事用に回す余裕ができる。中国やパキスタンがそれを口実に兵器用核物質を増産する恐れもある。そんなリスクをどう判断しているのか。

 スーダンへの自衛隊派遣も平和構築に寄与する好機だったが、慎重派の防衛省が押し切った形で派遣は見送られた。ここでも首相の影は薄かった。

 米軍の普天間基地移設問題で、対米関係と沖縄県民の反発との板挟みになって、鳩山政権は命運が尽きた。内政との調整が不十分な外交は頓挫する。それが大きな教訓となったはずだが、首相はどう生かしていくのか。

 省益を超えた総合的な判断と、内政との折り合いをつけた持続可能性が、政治主導の外交・安全保障の眼目である。首相が司令塔となって基本軸を定め、大所高所から先手、先手で取り組んでこそ、ハイリターンを望める。

 首相を補佐する仕組みも大事だ。

 何もかも官房長官に集中せず、外交は外相に政府内の総合調整を委ねる。そんな方法もあるのではないか。

 首相には、激動の時代を乗り切る落ち着いたかじ取りを望みたい。

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コソボ「独立」―国境なき時代の国境

 「独立」。これほど人々の心を燃えたたせてきた言葉はない。しかし、グローバル時代の今日、これほど人々の目を現実からそらしかねない言葉もあまりない。

 旧ユーゴスラビア・セルビア共和国のコソボ自治州の独立問題は、その一例だ。北大西洋条約機構(NATO)も武力介入した紛争の果てに、コソボは2008年2月に独立を宣言した。

 最近、オランダにある国際司法裁判所(ICJ)が、この独立宣言は「国際法に反していない」とする勧告的意見を示した。それが再び、対立を再燃させている。

 日本や欧米の多くは意見を支持している。他方、「コソボは領土の一部」と主張してきたセルビアは落胆と怒りを隠さない。自国内の分離独立運動への影響を懸念する中国なども警戒している。逆に、グルジアからの独立を宣言した南オセチアやアブハジア自治共和国などは歓迎している。

 一つの問題に決着をつけるはずの独立が、新たな緊張と対立をもたらす。

 そもそもコソボの独立は、偏狭な民族主義によって不和と憎悪が渦巻いた旧ユーゴで、和解に失敗した国際調停団が、やむなく示した和平実現への出口だった。

 ICJも、コソボが独立宣言することが国際法に反しないと認めただけだ。独立の承認は各国が独自に判断することとしており、各地の分離独立運動を後押しするものではない。

 また独立を宣言したとはいえ、コソボ自身、今なお国連の統治下にあり、NATO軍によって治安を保っている。政治的にも経済的にも自立したとは言い難いのが現実だ。

 20世紀半ば、アジアやアフリカの多くの国が植民地支配から解放され、人々は独立の喜びに酔いしれた。日本の明治維新期の先人たちの心をとらえていたのも、独立を守る決意だった。

 しかし、国々や人々の相互依存状態が飛躍的に進んでいる今、独立が文字通りの独り立ちを意味するわけではない。それでも、分離独立への動きは多かれ少なかれ地域の緊張を高める。

 セルビアとコソボも、「国境」をはさみ「独立」という名目をめぐってにらみあい続けても、得るものより失うものの方が多いだろう。ICJの意見を機に、欧州連合(EU)と連携し、共存と和解への道を歩んでほしい。

 弾圧を受ける少数民族などが独立を求めようとするのは当然の動きだろう。だが、民族や宗教の違いを強調して無用な壁を増やし続けることも、人々を狭い仲間意識に閉じ込め解放からかえって遠ざける。

 今は経済危機など重大な問題で、国境を超える解決策が求められる時代だ。政治を分断する独立には、とりわけ注意深い扱いが必要だ。

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