HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 36463 Content-Type: text/html ETag: "f42f8-12eb-8b42af40" Expires: Fri, 30 Jul 2010 23:21:43 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 30 Jul 2010 23:21:43 GMT Connection: close 7月31日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

本文です

7月31日付 編集手帳

 与謝野晶子の歌にある。〈腹立ちて炭()きちらす三つの子を()すに任せて鶯をきく〉。(かん)(しゃく)を起こして部屋を汚す3歳児を(しか)るでもない。後始末をするでもない。母は悠然とウグイスの声を聴いている◆晶子は11人の子をもうけた。生涯に5万首の歌を詠み、膨大な文章をつづり、苦しい家計をやりくりした人は、この図太(ずぶと)さで子育てを乗り切ったのだろう◆育児放棄の悲劇に接するたび、この歌が浮かぶ。部屋は汚れていい。ズボラでいい。食事と健康にだけ目を配り、あとは晶子流で図太く構える。できなかったか、と◆大阪市内のマンションで、3歳と1歳の幼児が遺体で見つかった。逮捕された母親(23)は「育児がいやになった」と供述している。食べ物も水も与えられなかったのだろう。児童相談所にはこれまで、近隣の住民から虐待を疑う通報があり、職員が計5回にわたって訪問している。いずれも応答がなく、ドアは施錠されていたという。またしても瀬戸際の命を救えなかった◆長女は「桜子」ちゃん、長男は「楓」ちゃんという。その花と葉が季節を彩るころに生まれたか。美しい名前が(かな)しい。

2010年7月31日01時42分  読売新聞)
現在位置は
です