HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 30 Jul 2010 21:12:39 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:生物多様性条約 南北対立の愚かしさよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

生物多様性条約 南北対立の愚かしさよ

2010年7月30日

 生き物の恵みから得る利益を分け合うルール(議定書)の採択は、十月に名古屋で開かれる生物多様性条約第十回締約国会議(COP10)最大の焦点だ。南北の間の壁はまだ厚く、高いのだが。

 「われわれにも利益を受ける権利がある」。遺伝資源(生き物の恵み)を独占的に享受する先進国側に対し、途上国側の主張は、このひと言に要約される。

 三月にコロンビアのカリで開かれた作業部会が、「名古屋議定書」採択に向けた最後の会合になるはずだった。しかし、草案は作ったものの、途中から南北の主張がすれ違い、COP10議長国の日本が費用を出して、七月半ばのモントリオール再開会合にこぎ着けた。議定書採択を期す日本の意欲とともに、南北対立の深刻さを浮き彫りにした会合だった。

 三十一条からなる議定書の原案は、大枠ではまとまった。温暖化対策とは違い、法的拘束力のある議定書は、むしろ途上国側からの要望によるものだ。遺伝資源から得られる利益を、提供国にも配分する。提供は契約に基づくという大前提に関しては、南北双方否やはない。問題は、何を遺伝資源とするか、いつまでさかのぼって利益を配分するかという点だ。

 途上国側は遺伝資源からの「派生物」、生き物から取り出した成分などを化学合成して作った薬品なども、対象にすべきだと主張する。例えば伝染病を克服するにはウイルスの入手が欠かせない。それさえも例外にはしないという。

 また、時期については、欧州による植民地支配時までさかのぼって支払うべきだという国もある。

 遺伝資源市場は一兆ドル(約九十兆円)ともいわれている。途上国側の複雑な思いはわかる。だが、原料だけで製品は生み出せない。紛糾が長引いて、医薬品や、熱帯などにも適合できる食料の開発などが遅れれば、南北を問わず、人類全体にとって、計り知れない損失を招くことになる。

 九月にはさらに非公式会合がタイで開かれる。細部をどこまで詰めるかは別にして、名古屋で議定書を採択するという最低線は固めるべきだ。その上で、医薬品や食料など「人類益」配分の仕組みやルールを築く中期目標を、継続的に積み上げていけばいい。

 生き物の絶滅に歯止めをかける「名古屋ターゲット」も同様だ。現行の目標は今年で切れる。遺伝資源も多様な生き物がいるからこそ、生み出されるものだから。

 

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