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2010年7月31日(土)付

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菅首相会見―国民に率直に語ってこそ

参院選で信任を得られなかったが、ここで政権運営の責任を投げ出すわけにはいかない。そう覚悟を決めたのなら、今後何を目指すのか、その旗印をもっと率直に打ち出してほしかった。[記事全文]

自然エネルギー―普及へ、負担の全容示せ

再生可能な自然エネルギーの普及を政策で後押ししたい。そうするには、今後の家計と企業の負担増について、国民にていねいに説明していくことが大前提となる。菅政権は、太陽光や風[記事全文]

菅首相会見―国民に率直に語ってこそ

 参院選で信任を得られなかったが、ここで政権運営の責任を投げ出すわけにはいかない。そう覚悟を決めたのなら、今後何を目指すのか、その旗印をもっと率直に打ち出してほしかった。

 菅直人首相がきのう、国会召集日としては異例の記者会見を開いた。実質的に、首相の「出直し所信表明演説」と言っていい。

 首相は冒頭、自らの消費税発言が参院選の敗因と認めつつ、引き続き財政再建に取り組む決意を強調した。だれが首相でも「避けて通れない」課題だという現状認識はその通りである。

 一方で、再選を期す9月の党代表選では消費増税は掲げないとも述べた。本当にやる気があるのか、これでは有権者にはわかりにくい。

 来年度予算編成での無駄の削減を強調したのは、「増税の前にやるべきことがあるだろう」という世論に配慮したものに違いない。

 国会議員自身が「身を切る」必要を強調したのはいい。だが、衆参両院の定数削減について年末までに与野党合意を目指すというのは急ぎすぎではないか。選挙制度の根幹にもかかわるテーマだ。熟慮を欠いては禍根を残す。

 ねじれ国会については、与野党が合意すれば困難な政策も実現できるとして、「前向きに受け止めたい」と野党に協力を呼びかけた。

 これからの菅政権の方向性を示すと意気込んで臨んだ会見である。そのわりに起死回生にかける迫力を感じ取れなかったのは残念だ。

 参院では野党が主導権を握る。足元の民主党内も、小沢一郎前幹事長に近い議員が公然と首相に退陣を求めるなど、一枚岩にはほど遠い。

 当面、首相が頼りとすべきは民意の他ない。国民の支持があって初めて、党内の反対派や野党を説得する足場ができるというものだ。

 そのためには、自らが目指す理念、政策、実現するための道筋を国民に訴える努力を尽くさなければいけない。

 気になるのは、首相が党代表再選に向け、批判的な勢力を刺激しまいと、ひたすら低姿勢で嵐が去るのを待っているようにみえることだ。

 今後の消費税論議の進め方について言及を避けていることだけではない。財源不足で行き詰まった昨年の衆院選マニフェストをどう扱うのかの大方針もあいまいだ。政治家がいとも簡単に信念を封印するようでは、苦境を突破する推進力は生まれない。

 首相は、先の通常国会での所信表明で「国民が私を信頼してくださるかどうかで、リーダーシップを持つことができるかどうかが決まる」と述べた。

 傷ついた信頼を回復するのは難しい。国民に粘り強く語りかける姿勢を保って活路を開くしかない。来週の予算委員会も大切な発信の場である。

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自然エネルギー―普及へ、負担の全容示せ

 再生可能な自然エネルギーの普及を政策で後押ししたい。そうするには、今後の家計と企業の負担増について、国民にていねいに説明していくことが大前提となる。

 菅政権は、太陽光や風力、地熱などの再生エネルギーでつくった電力をすべて買い取ることを電力会社に義務づける「全量買い取り制度」を導入する。その具体案を経済産業省がまとめた。低炭素社会へのうねりを加速する切り札という位置づけだ。

 自然エネルギーの発電コストは、火力や原子力による発電の原価に比べて今はかなり割高だ。政策による支援なしには、なかなか普及が進まない。そこで、高めの価格で電力会社に買い取らせ、割高分を電気料金に上乗せする。つまり利用者負担で、自然エネルギーによる発電に一種の大胆な「補助金」を投入する制度である。

 とくに力を入れようとしているのが太陽光発電である。5年前、日本が太陽光発電量の世界一の座をドイツに譲ったのは、ドイツがこの制度をテコに急速に普及させたからだった。

 日本は今も住宅用の太陽光発電ではドイツと肩を並べるが、「メガソーラー」と呼ばれる大規模な太陽光発電所を生み出す制度を欠く。新制度で事業者のメガソーラーへの参入を促そうというのだ。

 資源小国の日本が自然エネルギーを長期的に増やしていく意義は、地球温暖化対策だけでなくエネルギー安全保障の面からも大きい。太陽光など自然エネルギー分野の技術開発でも世界一をめざしていくことが大事だ。

 ただ、この制度には悩ましさもある。電力会社の買い取り価格を高くすれば、もうけを期待して参入は増える。増えすぎれば、利用者に転嫁される上乗せ電気料金が過大なものになりかねない。

 国内市場を無理に拡大したり、持続可能でない制度にしたりすれば長い目ではマイナスだ。

 欧州諸国は「電気料金への転嫁額が大きすぎる」と批判を浴び、買い取り価格の大幅引き下げを迫られている。欧州の価格水準を参考にしている経産省案では、標準的な家庭で電気料金への上乗せ負担が年約2400円、大工場では年2千万円にのぼる。

 さっそく日本経団連の米倉弘昌会長から「国民負担が大きい」と反対の意向が表明された。

 菅政権はこうした声を受け止めて対話を進めてほしい。同時に、検討中の地球温暖化対策税や排出量取引を含む環境関連の新制度とその効用、さらに負担の全体像をできるだけ早く国民に示す必要があるのではないか。

 すべて合わせると、どれほどの負担となるのか。そこが分からないままでは、賛成しにくい人も多いだろう。

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