HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37608 Content-Type: text/html ETag: "3968e1-1654-d5ce3a80" Expires: Wed, 28 Jul 2010 21:21:40 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 28 Jul 2010 21:21:40 GMT Connection: close 防衛白書延期 禍根残す政府の事なかれ主義 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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防衛白書延期 禍根残す政府の事なかれ主義(7月29日付・読売社説)

 日韓関係に波風を立てたくない、という無責任な事なかれ主義であり、今後に禍根を残すと言わざるを得ない。

 政府が、30日に予定していた2010年版防衛白書の閣議了承を9月に延期した。

 仙谷官房長官は、延期の理由について、韓国の哨戒艦沈没事件に関する国連の動きや、防衛大綱見直しの報告書などを新たに記載することなどを挙げた。到底、納得できる説明ではない。

 本来、こうした動きをいちいち追加する必要性はない。既に約940万円をかけて、1万4000部以上を印刷した白書の公表を延期する理由として不十分だ。

 政府関係者によると、本当の理由は韓国側への配慮だとされる。防衛白書は例年、竹島を「わが国固有の領土」と明記している。今年は8月29日に日韓併合条約発効100年を控えており、反日感情を刺激したくなかったという。

 だが、政府の白書が、竹島は日本固有の領土という政府見解を盛り込むのは当然のことだ。

 竹島の領有権を主張する韓国側は毎年、抗議しているが、日韓関係を損なうほどではなかった。日韓併合100年を前に、反日感情の高まりを懸念する向きもあるものの、現時点で、そんな動きは表面化していない。

 政府は、例年通り、白書を淡々と公表すべきだった。

 公表直前に異例の形で延期し、姑息(こそく)な説明を加えたことで、かえって竹島問題が注目を集めてしまい、日韓関係にも逆効果ではないか。菅政権の判断ミスである。

 防衛、外務両省は、白書を予定通り公表するよう主張していた。前原国土交通相と長島昭久防衛政務官が先週韓国を訪問した際、一部の関係者から配慮を求められた。その報告を受けた菅首相と仙谷長官が延期を決めたという。

 米軍普天間飛行場移設問題などで露呈した民主党政権の「()しき政治主導」の典型例と言える。

 民主党政権は昨年12月にも、新学習指導要領の高校地理の解説書で竹島問題への言及を見送っている。このように、言うべきことを言わない対応を続けては、日本は国の根幹にかかわる問題でも譲歩すると見られかねない。

 竹島は、歴史的にも国際法上も日本の領土である。韓国は、日本にとって重要な隣国だが、領土問題で安易な妥協は禁物だ。

 領土問題で主張が異なっても、2国間関係をきちんと維持することは十分可能なはずであり、そうした外交こそ追求すべきだ。

2010年7月29日01時08分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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