メキシコ湾で原油流出事故を起こした英石油大手BPのトップが引責辞任する。生態系への打撃は計り知れない。深海油田の安全性強化や自然エネルギーへの転換など、日本も教訓を生かすときだ。
BPの石油掘削装置爆発から三カ月。海底千五百メートルからの原油流出は米国史上最悪の被害を招き、漁業にも深刻な影響を及ぼしている。正常に機能しなかった暴噴防止装置など、安全を軽視した結果、四〜六月期決算は一・五兆円もの赤字に転落した。ヘイワード最高経営責任者の引責辞任は当然といえる。
原油流出を単なる事故として片づけてはならない。石油に依存してきた人類に重い教訓を残したと受けとめるべきだろう。具体的には、深海開発の信頼性をいかに保つか、今後も石油をエネルギーの主役に据えるべきか−などだ。
かつて米エクソンモービルやBPなどのメジャー(国際石油資本)が世界をまたに手掛けてきた油田開発は、資源国自らが主導する時代に入り、安くて大量の原油を調達してきた「石油の時代」は幕が下ろされつつある。追いやられたメジャーの目線は深海へと移り、世界の原油生産量の三分の一を海底に頼るようになった。
国際エネルギー機関は、事故の影響を織り込んで「二〇一五年の原油生産は日量八十万〜九十万バレル減少」と予測する。安全基準がより厳しくなり、開発費がかさんで生産が制約されるとの分析だ。
すでに米国のオバマ政権はメキシコ湾の鉱区入札中止などを決定し、「代替エネルギーの必要性が高まった」と電気自動車の普及促進など脱石油政策にも重点を置き始めた。欧州連合も海洋開発の認可を厳しくする方針という。
日本はどう向き合うべきか。政府は海外油田の自主開発比率を、現在の16%から三〇年までに40%に引き上げる目標を掲げた。中国などの大量消費に目をやれば、もちろん安定確保は欠かせないが、日本のエネルギー供給に占める化石燃料の割合が83%に達している事実に目をそむけてはならない。
風力発電などを積極導入しているドイツやフランスを上回り、「日本は環境先進国」と胸を張れなくなった。化石燃料に過度に頼らない均衡のとれたエネルギーの組み合わせこそが求められている。
出遅れ感が否めないエネルギー転換を推し進め、二酸化炭素の排出を抑え込む。日本がメキシコ湾事故から学ぶべき教訓だろう。
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