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2010年7月27日(火)付

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地デジあと1年―全世帯普及は間に合うか

テレビのスイッチをいれても画面は砂嵐が流れるばかり。1年後、こんなうっとうしい思いをする世帯がかなりの数に上る恐れがある。地上波テレビ放送の完全デジタル化まであと1年を[記事全文]

欧州銀行検査―難題だが、金融も財政も

欧州の金融システムを取り巻く疑心暗鬼をぬぐうため実施された銀行の特別検査の結果が出た。対象となった91銀行の9割以上が合格し、自己資本が足りずに「不合格」とされたのは7行だけだった。[記事全文]

地デジあと1年―全世帯普及は間に合うか

 テレビのスイッチをいれても画面は砂嵐が流れるばかり。1年後、こんなうっとうしい思いをする世帯がかなりの数に上る恐れがある。

 地上波テレビ放送の完全デジタル化まであと1年を切った。しかし、3月末の総務省調査によると、対応できていない世帯が全国に1100万あったという。これをアナログ放送が停止される来年7月24日までにゼロにしなければならないが、楽観できない。

 気になるデータがある。総務省のこの調査は地デジ普及率を83.3%としている。ところが、NHK放送文化研究所が1月に実施した調査では、地デジ対応受信機の保有率は63.7%にとどまった。また、民間調査会社の3月の調査でもまだ70%弱という。

 国策として推進してきた総務省は、来年4月に普及率100%を目標に掲げている。間にあうのだろうか。

 確かに、アナログからデジタルへは世界的な流れだ。電波の中継局や送信機器にNHKと民放が1兆5千億円を費やし、国も約2千億円を投じてきた一大事業だ。通信サービスとの連携を考えてもデジタル化は後戻りできない道といえる。

 また、デジタル化しながらアナログ放送を続けるというのも容易ではない。NHKと民放を合わせて年間約200億円の負担増になるし、アナログ機材の製造もすでに中止されている。

 しかし、テレビは社会の情報基盤だ。災害情報などで、時に人々の命綱になるし、娯楽のための身近な媒体でもある。多くの地デジ難民が出るような事態は避けなければならない。

 総務省は、視聴者へのかみ砕いた情報提供などを通して、普及にさらに一層の力を注ぐべきだ。でなければ期限までの全世帯普及は困難だろう。

 地デジ移行への大きな課題は、テレビ電波がビルに反射されることによる受信難、UHFアンテナが設置されていない集合住宅、デジタル電波が届かない山間部などをどうするか、だ。

 現在、受信障害の原因となっているビル所有者やアンテナが未対応の集合住宅の大家らに電話をかけ対応を促しているほか、住民説明会も始めた。工事費は自己負担が基本だが、国も一部を補助している。この3月末からはアナログテレビの画面に、総務省の地デジコールセンターの番号などを番組の冒頭に流している。

 「地デジ移行の間際になると機器の価格が安くなるのでは」と様子を見ている視聴者もいるだろうが、アナログとデジタルの区別がはっきりしない高齢者世帯などには、より積極的な働きかけが必要となる。

 普及率の調査は今秋、来春にもくり返しておこなわれる予定だ。その結果を見ながら、移行策の強化などで柔軟に対応することが求められる。

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欧州銀行検査―難題だが、金融も財政も

 欧州の金融システムを取り巻く疑心暗鬼をぬぐうため実施された銀行の特別検査の結果が出た。対象となった91銀行の9割以上が合格し、自己資本が足りずに「不合格」とされたのは7行だけだった。

 銀行経営について情報を開示した点は評価できる。だが、検査手法などに甘さが指摘され、今回の結果が金融不安の沈静化につながるかどうかは楽観できない。

 欧州の銀行の安全性は、各行が保有する欧州諸国の国債に対する市場の評価に左右される。詰まるところは、各国の財政の持続性にかかるという構図が鮮明になったといえる。

 金融と財政を一体的に、しかも実体経済を損なわずに再生する。複雑な連立方程式を解くような、厳しい課題が浮かび上がってきた。

 検査は統一基準こそ欧州連合(EU)の銀行監督委員会が作ったが、実施は各国の監督当局に委ねられた。結果発表前から「我が国の銀行は大丈夫」といった政府筋の発言が相次ぎ、「お手盛り」の疑いが出ていた。南欧などのバブル崩壊地域では不動産価格の下落リスクなどが小さく見積もられた、との疑念も尽きない。

 銀行が保有する欧州各国の国債の扱いも甘かった。ギリシャなど債務不履行が心配される国々の国債についても、償還まで保有すれば損失の危険はないと見なされた。

 EUはギリシャなどを支援するため、国際通貨基金(IMF)と組んだ資金供給枠を用意するなど、加盟国の債務不履行を絶対に阻止する立場だ。このため、貸し倒れの危険はないとの建前を検査でも崩さなかった。

 一方、EU当局は各銀行が伏せてきた保有国債の内訳を開示させ、市場関係者の要望にある程度は応えた。

 銀行の特別検査は米国で昨春に行われた際には成功したとも言われるが、政府と銀行の信用不安が絡み合う欧州では限界がある。

 欧州の信用不安は、株安などを通じて世界の景気回復の足を引っ張りかねない。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、米国経済の先行きを「異例なほど不確実」と語った。中国も、欧州への輸出が減れば景気にマイナスだ。むろん日本にとってもひとごとではない。

 世界経済の失速を避けるために、EU当局の断固たる対応が求められている。検査結果を基に、再編や資本注入を通じた銀行の不良債権処理を加速させ、不透明と言われる情報開示をもっと徹底させるべきだ。

 さらにギリシャ、スペインなど危機の震源や温床となっている国々で財政健全化や経済の構造改革が着実に進む姿を世界に示し、国債と共通通貨ユーロの信用を守り抜かねばならない。

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