HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 37657 Content-Type: text/html ETag: "15cb18-15e7-3118100" Expires: Sat, 24 Jul 2010 22:21:23 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 24 Jul 2010 22:21:23 GMT Connection: close スイス列車事故 人気の氷河特急に何が起きた : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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スイス列車事故 人気の氷河特急に何が起きた(7月25日付・読売社説)

 スイス・アルプスの絶景を楽しむ鉄道ツアーが暗転した。

 南部バレー州で観光列車「氷河特急」が脱線、日本人に死者が出たほか約40人が負傷した。パノラマ車窓のガラスが飛び散り、車両が完全に横倒しになった光景には思わず息をのむ。

 日本人は、国内三つの旅行会社を通じて参加した中高年ツアー客が多かったという。重体の人も複数いるといい、けがの状態が心配だ。旅行会社や現地日本大使館は、情報収集と家族への連絡に全力をあげてもらいたい。

 脱線したのは、6両編成の列車の後ろ3両だ。前3両と切り離された格好で、斜面の(くぼ)みにかかる橋の手前で脱線している。もし橋から転落していたら、さらに大きな被害が出ていただろう。

 脱線の原因は明らかになっていない。なぜ後ろ3両だけ脱線したのかも不明だ。

 スイスの面積は日本の九州ほどだが、そこに5000キロを超える鉄道網が張り巡らされ、欧州でも有数の鉄道王国といわれる。

 とりわけ、車窓からアルプスの自然を堪能できる山岳鉄道は、外国人観光客に大人気で、氷河特急も7、8月は座席が込み合うという。スイスの観光産業を支える目玉の一つとなっている。

 また、スイスの鉄道は高い安全性と、正確なダイヤで定評がある。それだけに、今回の事故に驚く日本の鉄道専門家も多い。

 現地ではここ数日、寒暖の差が大きかったという。そのためレールが変形していた可能性などを指摘するメディアもある。

 鉄道会社側は、レールの変形については否定した上で、現時点では車両の不具合などの可能性に言及している。

 スイスの捜査当局が現場検証を始めた。再発防止のため、また、スイス観光の安全のイメージを損ねないためにも、徹底した原因究明を求めたい。

 多くの犠牲者が出た海外の乗り物事故で思い出されるのは、2000年11月、オーストリア・ザルツブルク州で起きたケーブルカー火災だ。犠牲者155人。スキーツアーに参加していた日本人中学生ら10人も死亡した。

 事故の前、州知事は、ケーブルカーを「最も新しく、最も安全な列車」と胸を張っていたという。多くの観光客を集めるオーストリアの信用は傷ついた。

 安全への慣れ、思い込みが悲劇を招くケースは多い。氷河特急にそうしたゆるみはなかったか。

2010年7月25日01時54分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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