民主党が惨敗した参院選後初の臨時国会が三十日に召集される。本格的な法案審議は秋に再び召集される臨時国会以降だが、与党側は丁寧な国会運営に徹しないと、「ねじれ国会」を乗り切れない。
三十日召集の臨時国会では、与党が野党側の要求を受け入れ、衆参両院で予算委員会が開かれる。
参院選直後の国会での開催は異例だが、菅直人首相は就任後、参院選前の通常国会では開催に応じておらず、臨時国会で開くのは当然の判断だ。
首相にとっては野党側と初めて本格的な論戦を交わす場となる。
九月の民主党代表選で首相交代の可能性は否定できないが、首相は近く節目を迎える来年度予算編成や米軍普天間飛行場返還、「政治とカネ」について、野党側の質問に丁寧に答える必要がある。
参院選後の国会は、与党が参院で過半数に達しない「ねじれ」状態。それも、与党に衆院で三分の二以上の議席がなく、参院で否決された法案を衆院で再可決できない「真性ねじれ」だ。
押し切るだけの数すらない状況下で、国政の停滞を避け、国民に必要な政策を実現するには、政策ごとに与野党が連携する「部分連合」でしのぐしかあるまい。
与党側は自らの主張を押し通そうとせず、野党側も反対のための反対はしない。与野党がともに課題解決に当たり、合意形成に努める。そうした丁寧で地道な作業がねじれ国会に新たな地平を開く。
こうした中、民主、自民両党は全国の社会保険病院と厚生年金病院を運営する独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」を十月以降も存続させる法案の提出に向けて具体的な調整に入った。
また、みんなの党は民主党に、公務員制度改革に関する協議を両党間で始めるよう申し入れた。民主党は党内に検討チームをつくるという。いずれの動きも、部分連合に向けた胎動と受け止めたい。
気掛かりなのは、与党の一角を占める国民新党と連立を離脱した社民党とが、郵政改革法案と労働者派遣法改正案の成立に向けて連携を強めることで合意し、両党幹部が衆院での再可決も辞さない考えを示していることだ。
民主、国民新両党に社民党を加えれば衆院で三分の二に届くが、強引な国会運営姿勢は、部分連合の努力に水を差し、無益である。
首相がまさか「三分の二」の誘惑に乗るとは思いたくはないが、注意だけは喚起しておきたい。
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