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2010年7月24日(土)付

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2兆円枠―首相は歳出圧力を退けよ

これをきっかけに大胆な見直しが進み、メリハリのある予算につながるなら歓迎したいが、不安もぬぐえない。来年度予算の概算要求に向け、民主党政策調査会が提言をまとめた。[記事全文]

事故米偽装―農水省は消費者の目線で

本来は食用に適さないカビ米が、ウソやごまかしの経路をたどって、焼酎などになって私たちの口に入っていた。その不正を、農林水産省は何年間も見抜けなかった。さいわい健康への影[記事全文]

2兆円枠―首相は歳出圧力を退けよ

 これをきっかけに大胆な見直しが進み、メリハリのある予算につながるなら歓迎したいが、不安もぬぐえない。

 来年度予算の概算要求に向け、民主党政策調査会が提言をまとめた。

 国債費を除く歳出を今年度並みに抑える一方、2兆円の特別枠を設けて重点配分するよう求めている。実現するには他の経費を削らなければならない。野田佳彦財務相は、今年度より1割程度減らすよう各省庁に求める。

 民主党政権は、政策決定の政府への一元化を掲げた。族議員が影響力をふるう不透明なあり方を改めるためだ。ただ、党が政策を論議してはいけないということではない。

 特に、衆参の多数派が異なり、与党が衆院の3分の2の勢力も持たない掛け値なしの「ねじれ」国会では、政策実現に党の尽力が欠かせない。政調が政府に提言をすることはあっていい。

 心すべきは、政策に口を出す以上、責任も共有するという点である。

 真に優先する歳出は何か、何を切るかといった厳しい議論が求められる。党が「おねだり型」の要求をするなら、政府は耳を貸す必要はない。財源のめどのない公約が混迷を招いたことを忘れてはならない。

 今回の提言でも本来なら、特別枠の財源を明示すべきだった。「ムダづかい根絶」や「総予算組み替え」で財源をまかなうとする一方、どこをどの程度削るかは示していない。

 政府は、歳出増を伴う新政策にはそれに見合う恒久財源の確保を求める「ペイ・アズ・ユー・ゴー」原則を採る。党にも同じ責任があるはずだ。

 民主党内では、参院選の敗北をきっかけに歳出圧力が高まっている。敗因は菅直人首相の消費税発言だ、この際路線を変更せよ、ということだろう。

 だが、朝日新聞の世論調査では、参院選で首相の消費税をめぐる発言や対応を重視した人は32%で、重視しないが57%。消費税引き上げの議論は進めた方が良いという人は63%に及ぶ。問題は消費増税の是非ではなく、「大切なお金を委ねるには、政治は信頼に足りない」という不信感ではないか。

 政権交代に寄せられた期待を掘り崩したのは、政治とカネに利益誘導体質といった、古い政治の残滓(ざんし)だった。菅首相が一時高い支持を得たのも、古い政治との決別をめざす姿勢が人事などでのぞいたからに違いない。

 首相は見誤ってはならない。選挙に負けたからこそ決別を急ぐべきだ。

 あえて消費増税を持ち出したのに、おねだり型の歳出圧力に屈したのでは、自らを否定するに等しい。

 近づく党代表選を乗り切れるのか不安なら、党内を慮(おもんぱか)って節を曲げるのではなく、有権者の信頼を取り戻すことの方が近道ではないか。国民に向けて、もっと語ってもらいたい。

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事故米偽装―農水省は消費者の目線で

 本来は食用に適さないカビ米が、ウソやごまかしの経路をたどって、焼酎などになって私たちの口に入っていた。その不正を、農林水産省は何年間も見抜けなかった。

 さいわい健康への影響はないようだ。だが、この国の「食の安全」は本当に大丈夫なんだろうか。

 問題の米は、日本が一定量の輸入を義務づけられたミニマムアクセス(MA)米として、2003〜07年に商社が買い入れたもの。カビが見つかった分は非食用として安く売られ、飼料になるはずだった。ところが、加工業者やブローカーの手を経るうちに普通の米に化け、値段がつり上げられ、食品加工用にと売られていた。

 業者が認めた偽装は計3千トンにも上る。農水省は、食品衛生法違反容疑などで4業者を告発する予定だ。追及は当然だが、同省は何よりもまず、自身の失態を反省すべきだろう。

 事故米の不正転売は、08年秋に最初に発覚。国が輸入したMA米のうち、農薬やカビ毒で汚染された米が転売され、食用に回っていた。その中で、福岡農政事務所が何十回も偽装業者の工場に立ち入り調査をしながら、見逃していたことが批判された。

 この問題を受け、農水省は商社輸入分の事故米5千トン分についても追跡調査。同年11月に「飼料用に使われたと確認した」と発表した。だが実際は、業者への聞き取りが中心の生煮え調査で、総量の6割に及んだ「米ロンダリング」を、またも見抜けなかった。

 去年秋、焼酎メーカーの原料米を調べていた地方農政局の職員が、たまたま「米国産MA米」とある伝票に目をとめ、「念のため調べては」と連絡したことが発覚につながったという。そうした「目」がなければ、闇に埋もれていたということだ。

 国が米の生産・流通を管理していた旧食糧管理法時代の感覚を引きずったまま、生産者や業者との「なれ合い体質」が、甘い検査やいい加減な調査を生みだしてきたのではないか。

 一方で、新食糧法下で流通が自由化され、米を転売し、利ざやを稼ぐ不透明な市場ができあがり、不正の温床になっているとも指摘されている。

 刑事告発を機に、米流通の実態にきちんとメスを入れ、取引を正常化させてゆく必要もあるだろう。

 同省は食糧法を改正し、4月からは米の用途外使用への罰則や検査権限を強化した。産地や取引情報を記録・保存し、消費者に伝えることを義務づけた米トレーサビリティー法も、今年10月から施行される。実効性をどう確保するかが、課題になる。

 業者側に立った姿勢から、消費者本位の目線へと変われるか。農水省の監督機能を、いっそのこと体制が一新された消費者庁が担ってみてはどうか。

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