外国部隊が担ってきたアフガニスタンの治安権限が、二〇一四年までにアフガン政府に移されることになった。自立への道筋を描いても、治安悪化や政権腐敗が妨げる。息の長い国際支援が必要だ。
権限移譲は、二十日に首都カブールの国際会議で決まった。潘基文国連事務総長やクリントン米国務長官、岡田克也外相など、約七十の国・機関の代表が出席した。
タリバン政権崩壊から九年。これほどの顔ぶれがアフガンに集まったのは初めてだ。四年以内との具体的な目標もできた。でもこの国の現状を見ると道のりは険しい。
タリバンの攻撃をどう鎮めるのか。カルザイ大統領は穏健派タリバンに和解を呼びかけたが、応じる気配はない。米軍の増派で外国部隊は約十五万人に増えたが、戦闘は収まるどころか激しくなるばかりだ。六月の外国人兵士の死者は百三人で過去最悪となった。
米国は来年七月からの撤退を決めている。カルザイ政権は国軍や警察の増強を急ぐが、実力や装備で、外国部隊には追いつかない。
「本当の敵はタリバンでなく、カルザイ政権そのもの」とまでささやかれる汚職体質。主要国からの援助の二割しかアフガン政府を通らず、多くは事業を請け負う外国企業に直接流れている。会議でカルザイ政権は「半分は政府経由に」と求めた。
世界各国の汚職を監視する国際NGOによると、アフガンの昨年の「清潔度」は百八十カ国・地域のうち最悪のソマリアに次ぐ百七十九位。これで「援助金を」と言われても、心配になるのは当然だ。汚職犯罪専門の特別法廷を設置するというが、信頼に足る透明な援助金の使い方を求めたい。
米国に次ぐ支援国の日本は、五年間に最大五十億ドルを約束している。このうち岡田外相は、元タリバン兵士の職業訓練など年内に十一億ドルの援助を行うと表明した。
先月来日したカルザイ大統領は日本国際問題研究所の講演会で、日本の援助を「私欲のない無辜(むこ)の支援」と感謝してみせたが、外交辞令だけではあるまい。
タリバン政権時代、女子は学校に通えなかった。今は女子学校が建設され、全児童生徒のうち女子が四割近くに増えた。ポリオ(小児まひ)のワクチン接種も進み、流行は南部地域だけになった。
いずれも日本が支援を続けてきた分野である。こんな例を一つずつ増やしていくことが、一歩ずつでも確実な再建につながる。
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