米国と韓国が近く大規模な合同軍事演習をする。米韓は三月の韓国哨戒艦沈没が北朝鮮の攻撃によるものとみており、演習は強い圧力になる。不測の事態を招かぬよう、米韓には慎重さも求めたい。
演習は二十五日から四日間、朝鮮半島東岸の日本海で実施され、約八千人が参加する。北朝鮮は非難談話を再三発表している。
艦艇は横須賀を拠点とする原子力空母「ジョージ・ワシントン」をはじめ、イージス艦、潜水艦など約二十隻。航空機は最新鋭ステルス戦闘機F22ラプターなど約二百機が展開される。
訪韓中のゲーツ米国防長官は「北朝鮮に対し、抑止力を強く示すものだ」と目的を説明した。
クリントン国務長官も訪韓し、ソウルで二十一日、米韓の外交、安保のトップが一堂に会して「2プラス2」会談をした。
共同声明を発表し、北朝鮮に対して「哨戒艦攻撃の責任を取る」よう求め、「韓国へのさらなる攻撃や敵対行為をすれば深刻な結果を伴う」と警告した。
哨戒艦沈没については国連安保理で議長声明が採択されたが、北朝鮮の犯行だと名指しはせず「あいまい決着」が図られた。米韓はこれでは不足だと考えている。
北朝鮮は昨年、核実験、長距離弾道ミサイルの発射をした。金正日総書記の後継体制を築く作業が進行中だが、かつて金日成、金正日父子への権力移行期に、北朝鮮工作員が韓国側を狙ったテロを続けたことがある。
米韓両国はこれらの歴史的な事実を重視し、軍事演習を実施して強い警告を出したといえよう。
脱北者らの証言だと、米韓が演習をすると北朝鮮軍も警戒態勢をとるが、資材や燃料の確保に苦しむ。時には地域や職場、学校でも避難訓練があり、社会全体に大きな影響が出るという。
今回の米韓演習は中国も刺激している。演習は今後数カ月続くといい、朝鮮半島西の黄海で行う可能性もある。黄海を自国の「庭先」だと考える中国は激しく反発する。
沈没事件によって高まった緊張には、まだ出口が見えない。だが、朝鮮半島の周辺国には、北朝鮮の核開発を阻止するという共通の目的がある。
米韓は軍事演習だけでなく、外交による緊張緩和の道も探るべきだろう。中国は沈没事件では北朝鮮の犯行と断定できないと主張したが、今後は北朝鮮の危険な行動を抑える役割が求められる。
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