HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 22 Jul 2010 02:14:40 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:生保と政界 契約者本位が疑われる:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

生保と政界 契約者本位が疑われる

2010年7月22日

 生命保険業界の旧態依然の体質が浮かんだ。保険金の不払い問題をめぐる政界工作の疑いだ。責任逃れの算段だったとすれば見苦しい。「契約者本位」を誓ったはずの出直し宣言が泣かないか。

 生保の保険金不払いは二〇〇五年二月に明治安田生命で表面化したのに続き、業界全体で大量に見つかった。事態を重く見た金融庁は保険業法に基づき、二度にわたり実態を調べさせた。

 不払いは最終的に、三十七社で〇六年三月までの五年間に計百三十五万件、総額九百七十三億円に上った。日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の大手四社で不払い額の六割を占めた。

 金融庁は〇八年七月、特に悪質だった十社に業務改善命令を出した。生保業界を揺るがす不祥事に発展したことは記憶に新しい。

 不払いが増えた大きな要因として、生保業界の請求主義があった。つまり「契約者の請求がなければ支払わない」という原則だ。のちに契約者不在との批判を浴びた利益至上主義の姿勢だった。

 ところが、生保業界は保険金の請求案内漏れは不当ではないとして金融庁に強く反発していた。今回明るみに出たのは、そうした対立構図の水面下で行われていた大手四社の政界攻勢の内幕だ。

 自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金は、大手を中心に〇五年から三年間で一・五倍に増えていた。保険行政に影響力を持つ自民党や民主党の国会議員を接待したり、パーティー券を購入したりしていた。

 不払い問題を取り上げた国会では〇七年五月、大手トップの参考人質疑の時間が予定の二時間半から一時間に急きょ短縮された。自民党の有力議員への働き掛けが奏功したとの疑いが出ている。

 こうした時期の政治家への接近や接待、献金は、不払い問題での責任追及に手心を加えてもらう思惑があったからだろう。そう受け取られても仕方がない。

 かつて金融業界は絶大な権限を誇った旧大蔵省の護送船団行政に守られていた。一九九八年の銀行、証券、保険の自由化はそれまでの銀行業界や証券業界と政官界との癒着をあぶり出した。

 生保業界の政界攻勢は、今なお古いなれ合い体質が息づいているのではないかと疑わせる。自浄能力を発揮して一掃し、もっと真摯(しんし)に契約者と向き合うべきだ。政治家も襟を正し、自ら説明責任を果たすべきだろう。

 

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