HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 21 Jul 2010 23:14:41 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:金元工作員来日 拉致解決に戦略を築け:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

金元工作員来日 拉致解決に戦略を築け

2010年7月21日

 一九八七年の大韓航空機爆破事件の実行犯だった金賢姫・元北朝鮮工作員が来日した。日本人に偽装する教育を受けた時に拉致被害者と知り合ったという。貴重な証言が得られることを願う。

 金元工作員は二十一日に拉致被害者、横田めぐみさんの両親と初めて対面する。「北朝鮮でめぐみさんに会ったことがある」と昨年、日本側に伝えた。

 この話は二十五年以上も前のことだ。父滋さんは「現在のめぐみの様子がわかる話が出るとは思えない」と冷静だが、「面会で世論喚起ができれば、問題解決にプラスになる」と話している。どのような情報でもよい。知っていることはすべて両親に伝えてほしい。

 やはり拉致被害者で日本語教育係だった田口八重子さんの家族とは二十日に、韓国で会って以来、二度目の対面をした。

 拉致問題は二〇〇八年六月、北朝鮮が再調査を約束したまま、その後進展がない。中井洽拉致問題担当相は先日の会見で、来日の理由を「国民に拉致に対する憤りと関心を持ってもらうため」と説明した。日本政府には膠着(こうちゃく)状態を打開したい、国民の関心を以前のように高めたいとの目的があった。

 北朝鮮に拉致された日本人を一人でも多く捜しだし、帰国させる−。国全体で取り組むべきだが、緊張が高まる朝鮮半島情勢を総合的に分析して、戦略を築くことが求められる。

 韓国哨戒艦の爆発、沈没事件で米韓は北朝鮮の魚雷攻撃だと断定したが、中国はこれに同調しなかった。北朝鮮は金正日総書記の健康不安で三男ジョンウン氏への権力継承が進んでいる。その過程で国内が不安定になれば、拉致解決はさらに遠のくかもしれない。

 金元工作員は韓国政府から特赦されたとはいえ、航空機爆破で死刑が確定し、日本の法律では入国拒否の対象者だ。

 政府は特例措置で入国を認め、警備上の理由で滞在中の日程も非公開とした。これだけ異例の対応をしたのだから、中井担当相は金元工作員からどのような証言を聞けたか、拉致解決にこれからどう取り組むのか、国民に説明することが望ましい。

 六カ国協議の再開にめどが立たず、多国間で拉致問題を話し合う機会も減っている。戦略を練り直す必要がある。金元工作員の来日が政府の単なるパフォーマンスに終わってしまったのでは、意味がない。

 

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