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2010年7月22日(木)付

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米金融規制―安定成長へ工夫重ねよ

金融危機の再発を防ぐため、米国が新法を定めて金融規制の抜本的強化に踏み出す。この改革が米国だけでなく、世界経済の安定した成長に役立つよう期待したい。規制は景気に水を差す[記事全文]

泥沼アフガン―現政権任せにしない

国際テロと戦いながら、破綻(はたん)国家の再建も進める。泥沼化しつつあるアフガニスタンの現状は、この課題の難しさを国際社会に突きつけている。軍事力を前面に出し、その遂行[記事全文]

米金融規制―安定成長へ工夫重ねよ

 金融危機の再発を防ぐため、米国が新法を定めて金融規制の抜本的強化に踏み出す。この改革が米国だけでなく、世界経済の安定した成長に役立つよう期待したい。

 規制は景気に水を差すとの懸念もあるが、世界の金融市場を牛耳った米国系の巨大金融機関が強欲を抑制できず、危機を引き起こした。規制緩和の行き過ぎで多くの人々が失業などの苦しみを味わった以上、適切な規制を設けるのは当然のことだ。

 新しい金融規制強化法は、大恐慌の教訓から銀行業と証券業の垣根をつくったグラス・スティーガル法以来、約80年ぶりの大がかりな規制改革だ。

 その基本は、大衆のお金を預かる公共性の強い銀行には、損失の危険が高い金融取引から距離を置かせるということにある。

 「ボルカー・ルール」と呼ばれる、ボルカー元連邦準備制度理事会(FRB)議長の哲学をもとに、ヘッジファンドへの出資や、投機的な金融派生商品の取引を制限する。

 危機の温床となった金融バブルの背景には、規制や監督の裏をかく形でノンバンクなど「影の銀行」とよばれる金融機関が巨大化したことがあった。こうした事態を繰り返さないよう、FRBが幅広い金融関連業種を一元的に監視することになった。

 これまで目が届かなかった金融機関の活動に規制・監督当局がきちんと目を光らせるようになることは、重要な改善だといえる。

 規制強化を踏まえ、金融市場全体に正確な情報を行き渡らせることも、これからの重要な課題になる。

 米国でバブルがふくらみ続けた裏には、正しい情報が行き渡らず、ゆがみが蓄積されるという事情もあった。FRBは、こうした事態を防ぐためのルールづくりに力を注いでほしい。

 業務の規制が強化される米国の銀行についてこれから注目すべきは、産業向けの伝統的な金融業務をどう復興していくかだろう。

 新規制は、いわば「銀行よ本業に帰れ」と促すものといえる。だが、米国の銀行が金融派生商品などの投機的取引にのめり込んだのは、大企業が市場からの資金調達能力を高めたため、産業金融への需要が減ってきたからでもある。金余りと金利自由化が、その流れを加速してきた。

 銀行の未来図を描く上で鍵を握るのも、やはり情報だろう。企業や技術について、資本市場を通じたシステムよりも濃密で深い情報を銀行側が得て融資先を発掘できるかどうか。

 金融危機を経験済みの日本は、米国の規制強化をまねる必要はない。しかし、銀行の公共性を守りつつ収益力を高めるという共通の課題を抱えており、米銀の今後から目が離せない。

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泥沼アフガン―現政権任せにしない

 国際テロと戦いながら、破綻(はたん)国家の再建も進める。

 泥沼化しつつあるアフガニスタンの現状は、この課題の難しさを国際社会に突きつけている。軍事力を前面に出し、その遂行を主導した米国にとってはベトナムをしのぐ史上最長の戦争となってしまった。

 その狭い出口をさぐる国際会議が20日、カブールであった。70あまりの国や機関が参加し、2014年までに治安権限を国際治安支援部隊(ISAF)からアフガン政府に移すというカルザイ大統領の方針を承認。国際テロ組織アルカイダとの関係がない反政府勢力タリバーンの穏健派と和解を進めるアフガン政府の計画なども認められた。

 アフガンの自立を促し、11年7月に予定する米軍の撤退開始につなげたいというオバマ米大統領の描く戦略が、その根底にはある。

 だが、これを実現する道は困難に満ちているといわざるをえない。

 まず、オバマ氏の決定で就任時の約3倍にまで米軍が増強されたのに、タリバーンの掃討作戦は思うように進んでいない。タリバーンを押さえ込むどころか、米軍もISAFも戦闘での死者が6月に過去最高を記録。治安はむしろ悪化している。

 作戦をめぐって米政権を批判したアフガン駐留米軍の司令官が解任される事態まで起き、最近の米国での世論調査では、アフガン戦争に「戦う価値がある」とした回答が43%。オバマ政権発足後の最低だった。

 最も大きな懸念材料はカルザイ政権そのものである。

 カルザイ大統領は、01年の米国同時多発テロ後にタリバーン政権が崩壊してから一貫して国家再建のかじを取ってきた。だが、国民和解、統治能力の向上、汚職・腐敗対策という重要な課題でほとんど成果を上げていない。その結果、ここ数年でタリバーンの復権が顕著となり、攻勢も激化した。

 カブールの国際会議では、元タリバーン兵士の社会復帰をはじめ、農村開発やインフラ整備による雇用創出などのアフガン政府の計画にも支持は表明された。とはいえ、これもカルザイ政権の体質が抜本的に変わらなければ、成功はおぼつかない。

 突破口を開くには、思い切った手段が必要だ。たとえば、現政権がタリバーン穏健派と交渉する力に欠けるのであれば、国連事務総長ら国際機関の代表が仲介役となって間を取り持ってはどうか。

 泥沼化したアフガンが国際テロ組織の拠点になってしまえば、米国をはじめ各国の将兵が撤退しても、問題の根本的な解決にはならない。泥沼自体をきれいにしなければ、国際社会にとっての脅威は増すばかりだ。

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