HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 20 Jul 2010 21:14:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:『35人』学級 学舎の充実に知恵絞れ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

『35人』学級 学舎の充実に知恵絞れ

2010年7月20日

 公立小中学校の一学級の上限を四十人としている国の標準が見直されそうだ。先生がもっと子どもと向き合える学校環境を整える狙い。子どもは国の財産だ。学舎(まなびや)の充実をためらってはいけない。

 一学級の子どもの人数を減らし、先生の定数を増やすべきだ。中央教育審議会初等中等教育分科会がそんな提言をまとめた。

 教育界の要望を受けて文部科学省は、三十〜三十五人を目安に検討している。学級編成標準の見直しは、一九八〇年度に四十五人を四十人に引き下げて以来となる。

 学校現場は難問山積だ。新しい学習指導要領の実施で授業が増える。いじめや不登校は後を絶たない。日本語に不慣れな外国人や発達障害の子どもも目立つ。心を病んで休職に追い込まれる先生は多くなっている。

 受け持つ子どもが減れば、先生に余裕が生まれ、きめ細かな指導が可能になる。子どもは発言したり発表したりする活躍の場が増え、勉強意欲が高まるだろう。

 実際にはすでに多くの自治体が先生の給与を独自に捻出(ねんしゅつ)し、四十人より少ない学級編成を実現している。公立小中学校全体で小学生の八割、中学生の六割は三十五人以下の学級で学んでいる。

 成績が上がり、不登校が減った。学校生活になじめない「小一プロブレム」や「中一ギャップ」が改善された。そんな成功事例が多く報告されている。

 とはいえ、主に財政力の違いが地域格差を生んでいる。福島県の小学生の99・8%は三十五人以下の学級に在籍するが、静岡県では七割足らずだ。中学生だと、100%の福井県に対して沖縄県では四割に満たない。非正規雇用の先生も増えている。義務教育環境に不公平があってはいけない。

 国の標準が見直されれば、格差は縮小しよう。だが、全国的な三十五人学級の導入には先生を四万五千人増やし、国と地方を合わせて年三千億円が必要になるという試算がある。学校によっては教室の増改築も避けては通れまい。

 国も地方も財政難だが、好材料はある。子どもは減少し、給与の高いベテラン先生は大量退職の時期に入る。負担を抑えつつ少人数学級を実現できるよう文科省は知恵を絞るべきだ。

 先生と教え子、男と女、友人やライバル。集団生活を通して育(はぐく)まれる社会性も大切だ。そんな機能を損ねないよう少人数の強みを生かした環境づくりを望みたい。

 

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