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7月20日付 編集手帳

 7月も下旬の声を聞くころになると、毎年、きまって脳裏をかすめる地名がある。長崎県佐世保市の〈白南風町〉という。「白南風(しらはえ)」とは、梅雨が明けたころに吹く南風のことである◆白南風に対し、梅雨のさなかに吹く南風を「黒南風(くろはえ)」という。こうもり傘の黒からシャツの白へ――というのでもあるまいが、梅雨明けの前後を色で対比するならばなるほど、黒と白だろう。その町を訪ねたことはまだないが、すてきな地名である◆〈日焼けした/少女/白い歯と/水着のあとが/切り絵のよう〉(錦織澄江)の一首を『五行歌秀歌集』(市井社)に見つけた。風の白黒はやがて真夏の切り絵に姿を変えていく。いつもの年ならば、である◆今年は、黒から白へ移ろう季節を茶褐色の濁流が横切った。西日本の各地に梅雨前線のもたらした豪雨の爪跡はすさまじい。今もなお浸水した家屋を前に、途方に暮れている人も多かろう。松江市内の民家を直撃した土砂崩れで岩石の下敷きになり、就寝中の母と子が死亡したのをはじめ、多数の犠牲者が出た◆白と黒に、永別の儀式が連想される〈白南風の夏〉はつらい。

2010年7月20日01時49分  読売新聞)
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