HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 19 Jul 2010 20:14:49 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:殺人、交通事故、汚職、いじめ、自殺…。新聞の社会面は時とし…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

2010年7月19日

 殺人、交通事故、汚職、いじめ、自殺…。新聞の社会面は時として、殺伐な記事で埋め尽くされてしまう。暗くなりそうな気持ちをほっと和ませてくれるのが左隅の漫画だ▼新聞の連載として、史上最長の漫画「ほのぼの君」を本紙朝刊に連載した漫画家の佃公彦さんが八十歳で亡くなった。東京新聞に一九五六年から、中日新聞に七〇年から連載を始め、計一万五千四百五十一回はまさに金字塔だ▼少年時代に親しんだ徳島の自然が発想のベースになった。小川のせせらぎ、土のにおい、虫やザリガニ捕り、落ちてきたイガグリの痛さ…。原体験を脳裏に映し、日々の出来事を子どもの気持ちに置き換えてきた▼「ある瞬間、ポッと構図が浮かぶ。映画監督と同じで、その時にはもう登場人物のセリフも決まっている。そこで初めて鉛筆を持つ」と佃さん。新聞の俳句欄や読者投稿欄など、すべてがヒントになったという▼二〇〇七年三月、体力の衰えからペンが持てなくなり連載を降板。「寝ても覚めても、アイデアを考えていた。孤独な仕事でしたよ」とほっとしたように語ったのが印象的だった▼草木や花々、動物、虫たちが語りかける「ほのぼの君」の世界は、経済的な豊かさばかりを追い求め、忙しく働いてきた戦後社会で、私たちが忘れかけていたことを思い出させてくれた。佃さん、ありがとうございました。

 

この記事を印刷する