ミニカップ入りこんにゃくゼリーの窒息事故が相次いでいる問題で、消費者庁の対応が進まない。意見のまとまらないまま、対策は年末まで先送りされた。これで消費者行政の司令塔と言えるのか。
問題のこんにゃくゼリーはミニカップ入り。一口サイズのため、かまずに吸引してしまう恐れがある。普通のゼリーより硬く、弾力性が強い上に水に溶けにくい。のみ込む力が弱い子どもやお年寄りでは、のどに詰まらせ、窒息する危険性が指摘されてきた。実際、判明しているだけで一九九五年以降、二十二件の死亡事故が起きている。半数以上が七歳以下の子どもだ。
規制する法律が存在しない、いわゆる「すき間事案」の典型とされ、消費者庁創設の契機にもなった。ところが、同庁は発足から十カ月たった今も対策を示せないでいる。専門家や製造業者らでつくる研究会を発足させ、製品の硬さや形などの安全基準を年内にもまとめてもらう予定だが、法規制には消極的だ。
理由がないわけではない。二〇〇八年七月以降、同製品による死亡事故は起きていない。昨年九月に施行された消費者安全法は施行前の事故には適用できないため、規制が難しいという。
また、食品安全委員会が、ミニカップ入りこんにゃくゼリーによる事故の発生頻度について、もちより低く、あめと同程度とする評価をまとめたことなども影響している。規制の線引きが難しいとみているようだ。
しかし、同製品の危険性を示すデータもある。消費者庁が東京消防庁などの事故データを分析したところ、食品の窒息事故のうち、件数が最も多いのはもちだが、重症となる割合が最も高いのは、こんにゃくゼリーで85・7%。もちの重症率は54・7%だが、一般食品のもちをゼリーのような製品と同列に論じるわけにはいかない。あめの重症率は1・2%だった。海外でも事故が相次ぎ、欧州は七年前、韓国は五年前に、ミニカップゼリーの原料に、こんにゃくの使用を禁止している。
さまざまなデータや意見がある中で、消費者庁が慎重にならざるを得ない場合はあるだろう。しかし、求められているのは消費者行政を引っ張る司令塔役であって、各官庁の調整役ではない。今回の事例は、その姿勢を問う重要な試金石だ。消費者の生命と安全を守るという発足の原点に戻ってもらいたい。
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