米軍普天間飛行場の県内移設という菅内閣の方針に対し、沖縄県民は参院選で、どのような民意を示したのか。日米両政府が返還に向けた作業を進めるには、県民の民意を読み解く必要がある。
沖縄県選挙区では民主党が候補者擁立を見送り、自民党現職の島尻安伊子氏が、社民、共産両党がそれぞれ推薦する二人の無所属新人候補らを破って再選を果たした。
しかし、島尻氏ら主要三候補が県内移設反対で足並みをそろえ、普天間問題が明確な争点にならなかったのも事実だ。選挙区で全国最低の投票率52・44%も、そうしたことを反映しているのかもしれない。
では、県民の意思はどう読み解けばいいのか。一つの指標は比例代表の県内得票数だろう。
トップは社民党十二万六十四票で、民主党十一万八千九百十五票、公明党九万四千九百五票、自民党九万三千三百八十五票と続く。
社民党は二〇〇七年の前回、民主、自民に次ぐ三位で、今回、得票率も1・5ポイント伸ばした。
また、福島瑞穂党首が県内で得た個人名の票も、前々回〇四年の一万三百五十一票から二万七千六百七十九票へと倍増している。
福島氏は県内移設に反対して閣僚を罷免され、社民党は民主党との連立政権から離脱したが、沖縄県民は社民党に対し、より多くの支持を与えたことになる。
これに対し、民主党の比例代表候補で県出身の喜納昌吉氏は、〇四年の六万九百六十五票から三万六千二百五十一票に減らし、再選を果たせなかった。
喜納氏は、国外・県外移設を主張した鳩山由紀夫前首相が県内移設に舵(かじ)を切り、菅直人首相がそれを引き継いだことに対する県民の反発を一身に背負った。首相はそのことを認識すべきだ。
名護市辺野古への県内移設で合意した日米両政府は、代替施設の位置や工法を検討する専門家協議を十五日に再開するが、参院選で県民が示した民意を考えれば、県内移設強行はできないだろう。
問題は、菅内閣が参院選惨敗直後で、力不足という点だ。
続投表明した首相は、九月五日を軸に調整が進む民主党代表選後に内閣を改造し、態勢を立て直す意向だが、専門家協議は八月末までに結論を出し、県内移設計画が既成事実化してしまう。
沖縄の民意を日米協議に反映できるような強い交渉力を持つには態勢立て直しを急ぐ必要がある。代表選まで待ってはいられない。
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