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2010年7月16日(金)付

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「不起訴不当」―市民の声に耳を澄ます

検察審査会が民主党の小沢一郎前幹事長について「不起訴不当」の議決をした。秘書らと共謀して2007年分の政治資金収支報告書にうその記載をしたという容疑をめぐり、議決は小沢氏の関与があったのでは[記事全文]

暴力団対策―土俵から押し出すために

「暴力団関係者の入場はお断り致します監視カメラ作動中」と張り紙にある。ピリピリした空気の中、大相撲名古屋場所が行われている。先週には警視庁が、相撲部屋などを一斉捜索し[記事全文]

「不起訴不当」―市民の声に耳を澄ます

 検察審査会が民主党の小沢一郎前幹事長について「不起訴不当」の議決をした。秘書らと共謀して2007年分の政治資金収支報告書にうその記載をしたという容疑をめぐり、議決は小沢氏の関与があったのではないかとの心証を強く打ち出したうえで、さらに捜査を尽くすよう検察当局に求めた。

 小沢氏、そして氏を不起訴処分とした検察の双方にとって極めて厳しい内容である。だが「起訴相当」と異なり、検察が再捜査して改めて起訴を見送った場合、事件は終結する。

 小沢氏に対しては別の検察審査会から、04、05年分の収支報告書の記載に関し起訴相当議決が出ている。土地取引をめぐる小沢氏や秘書らの弁明に疑問と不信が突きつけられたのは同じだが、結論において二つの審査会の判断は微妙に分かれたことになる。

 釈然としない思いをもつ人もいるかもしれない。だが、証拠の評価やそこから導き出される結論は、見る角度や判断する人によって違いがあり、正解が用意されているわけではない。捜査当時、検察内部でも積極論と消極論が交錯していた。

 先の起訴相当議決の際、我々が今後の展開について予断を控えるべきだと指摘したのもそのためだ。04、05年分に関し強制起訴の可能性が残るこの状況と行方を、冷静に見守りたい。

 気になるのは、事件を機に一部の法律家やジャーナリストの間で持ち上がった審査会への批判だ。いわく、審査員には証拠を精査する能力がない。社会の風潮に左右される。そんな連中に強い権限を与えるのは危険だ――。

 ためにする批判であることは明らかだ。今回の議決からは、補佐役の弁護士の助けも得ながら、健全な常識と感覚に照らして証拠を丹念に検討した形跡がうかがえる。政治資金規正法の改正に向けて具体的な提言もしている。

 主権者である国民が司法に参加することで、司法の基盤は強まり、民主主義の発展をもたらす。そのことを再確認できる内容といえる。制度をより良いものにするための細部の見直しや検討は必要だが、市民の判断力を低く見たり危険視したりするような主張にくみするわけにはいかない。

 今回の議決は強制起訴に結びつくものではなかったとはいえ、小沢氏は政治的責任を免れるわけではない。

 氏は引き続き政界に大きな影響力をもつ。その「力」と密接にかかわる政治資金の取り扱いについて、再び重大な疑義が呈されているのだ。

 政治とカネの問題は民主党への期待を掘り崩し、参院選大敗の一因になった。小沢氏は議決の趣旨を受け止め、国会で説明するなど国民に正面から向き合うべきだ。党執行部の姿勢も問われる。具体的な行動抜きに出直しを誓っても、前途は開けない。

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暴力団対策―土俵から押し出すために

 「暴力団関係者の入場はお断り致します 監視カメラ作動中」と張り紙にある。ピリピリした空気の中、大相撲名古屋場所が行われている。

 先週には警視庁が、相撲部屋などを一斉捜索した。野球賭博の胴元を突き止め、暴力団とのかかわりをどれだけ解明できるかが焦点だ。

 日本相撲協会の独立委員会はきょう初会合を開き、改革論議をスタートする。力士の交遊や興行利権を通じて続いてきた暴力団との腐れ縁を、完全に断ち切ることが問われている。

 だが暴力団との関係は、角界という特別な集団だけの話だろうか。

 暴力団対策法の施行から18年。この間、暴力団構成員・準構成員の数は8万人台で大きな変化はない。相変わらず暴力団は収益を上げ続けているということだ。賭博のような伝統的手法は下火になったものの、ふつうの企業を装って不動産や金融取引に乗り出したり、公共工事に介入したりと、資金稼ぎの手段は多様になっている。

 社会と暴力団の共存は続いていても、その実態は見えにくくなり、摘発が年々難しくなっているのだ。発砲事件に一般の人が巻き込まれる被害も相次ぐ。今までの暴力団対策は行き詰まりつつある、というのが実情だ。

 カネのある所に群がるのが暴力団の行動原理だ。だとしたら、あらゆる経済活動から締め出し、稼がせないという「社会的包囲網」を築くしかない。

 銀行や証券会社では、暴力団組員に取引をさせないため、口座開設などの契約書に「暴力団排除条項」を入れておく動きが広がっている。

 窓口にやってきた客に、暴力団との関係がないことを確認する。のちに組関係者とわかった場合には、契約を解除できるよう定めておく。全国の銀行や証券会社で暴力団情報を共有する仕組みづくりも進む。ほかの業界でも取り組むべきだろう。

 スポーツ観戦やコンサート会場、宿泊施設、街の商店で。市民生活の様々な場面で「暴力団拒否」の意思表示をはり巡らせれば、彼らにとって心理的プレッシャーにはなる。

 各地の自治体が独自に定めている暴力団排除条例にも注目したい。

 この春施行された福岡県条例は、暴力団を利する取引を禁じ、暴力団を利用した企業や個人への罰則を初めて盛り込んだ。組事務所に使われると知って、不動産物件を仲介することも御法度だ。山口組総本部がある兵庫県では組長らが出入りする別宅も規制対象に加えようと、検討中だという。

 共存に終止符を打ち、社会の外へと暴力団を押し出し、孤立させる。

 その包囲網に、角界も加わらねばならない。実効性ある改革ができないなら、大相撲そのものが土俵から押し出されることを覚悟すべきである。

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