韓国哨戒艦の沈没事件で、国連安保理は議長声明を全会一致で採択した。名指しこそしなかったが、北朝鮮の関与を示唆したと解釈できる内容だ。北朝鮮に免罪符を与えたわけではない。
韓国兵四十六人が犠牲となった哨戒艦沈没。以後、南北の対話、交流はほぼ全面的に止まった。
議長声明は北朝鮮の犯行と結論づけた韓国と米英などの合同調査団の報告に言及し、攻撃を非難した。一方で関与を否定した北朝鮮などの主張にも留意するとした。
北朝鮮の攻撃だと明文化せよと求める米韓や日本と、北朝鮮をこれ以上追い詰めると暴発すると懸念する中国の対立が解けず、妥協の産物になった。
北朝鮮は外務省報道官の発言を通じて、「明確な判断や結論もない議長声明だ」と指摘した。名指しを免れたためか、これまでより抑制した立場表明といえる。
しかし北朝鮮に「おとがめなし」という結論ではない。国際社会は依然、強い不信感を抱いていることを忘れてはならない。
北朝鮮は昨年、ミサイル発射、核実験をし、安保理の制裁決議を受けている。朝鮮半島の緊張は何よりも、軍事的な脅威を高めて体制引き締めを図ろうとする行動に起因している。まずは「矛を収めて」、軍事挑発を自制すべきだ。
北朝鮮は健康不安のある金正日総書記の後継体制を築く準備を急いでいる。だが国際社会の支援、経済協力がなければ、安定は望めない。対話による国際協調を真剣に考える時だ。
議長声明によって沈没事件は国連の場では一区切りついたが、朝鮮半島情勢はいっそう複雑になっている。
米韓は北朝鮮の潜水艦攻撃を想定して黄海で合同軍事演習を計画しているが、中国は自国近海での演習になると猛反発している。対応次第では、米中の対立にも発展しかねない。
六カ国協議の再開も先行きが見えない。北朝鮮は条件次第では協議に復帰する姿勢を見せ始めたが、米韓は北朝鮮が非核化に向けた行動を取らない限り、協議をしても実効はないとみて、以前のように積極的ではない。
このままだと、朝鮮半島の緊張緩和は進みそうもない。北朝鮮の核開発を中止させ拡散を防ぐ、ミサイル発射など軍事挑発を抑える−。周辺国はこの共通の目標を確認して、利害を調整し協力態勢を再構築すべきだ。
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