HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17368 Content-Type: text/html ETag: "4b052a-43d8-93a29340" Cache-Control: max-age=5 Expires: Thu, 15 Jul 2010 00:21:44 GMT Date: Thu, 15 Jul 2010 00:21:39 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年7月15日(木)付

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 先の小欄で立葵(たちあおい)の花を「気っぷのいい脇役」と書いたら、読者から女優の故沢村貞子さんの面影が浮かぶと便りをいただいた。なるほどと思う。すっきりと茎を伸ばして下から花を咲かせ、てっぺんまで咲くころ梅雨が明けるとされる▼その時は近いようだ。紫陽花(あじさい)はしぼみ、代わって百日紅(さるすべり)、夾竹桃(きょうちくとう)、凌霄花(のうぜんかずら)といった炎天の花が咲き出した。来週からは晴れマークが並ぶ。だが、産みの苦しみならぬ「明けの苦しみ」と言うべきか、各地で雨が激しい。列島に絡む前線が凶暴な竜に見えてくる▼しぶきを上げて降る雨を「白雨(はくう)」という。山深い長野の木曽地方では「白い雨が降ると蛇抜(じゃぬ)けが起こる」と伝わるそうだ。山崩れや土石流のことをいう。地形が急峻(きゅうしゅん)な列島は古くから「蛇抜け」に泣かされてきた▼平安朝の白河法皇は、意のままにならぬものをあげて、「賀茂河の水、双六(すごろく)の賽(さい)、山法師(比叡山の僧兵)」と言ったそうだ。賀茂川は暴れ川で水害が多かった。時が流れた今にも通じる治水の難しさだろう▼気象庁によれば、「バケツをひっくり返したよう」と感じる雨は1時間に30ミリ以上だという。50ミリを超すと辺り一面が白っぽくなり、80ミリになると「恐怖を感じる」ほどになる。それさえしのぐ100ミリ超の雨が、近年、方々で観測されている▼地球規模の気候変動が言われる中、昨日までの無事が今日の安全を約束してくれないことを胸に畳みたい。豊かな水に恵まれた国土の、裏返しの泣きどころである。夏の高気圧が前線を追いやるまで、しばし気が抜けない。

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