HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 39766 Content-Type: text/html ETag: "a7799-1d36-8699ae00" Expires: Wed, 14 Jul 2010 03:21:32 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 14 Jul 2010 03:21:32 GMT Connection: close 税制抜本改革 ひるまず消費税論議を進めよ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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税制抜本改革 ひるまず消費税論議を進めよ(7月14日付・読売社説)

 参院選で民主党が敗北し、消費税率引き上げを含む税制改革論議が後退する懸念が出ている。

 民主党の枝野幹事長は「必ずしも当初想定していた期限にこだわらない」と語り、菅首相が目指していた2010年度内の具体案のとりまとめに固執しない意向を示した。

 しかし、税収が新規国債発行額を下回る異常な財政事情や、将来不安が高まる社会保障制度の現状を直視すれば、消費税論議を先送りする余裕はないはずだ。

 菅内閣は、税収増につながる日本経済の再生を急ぎ、消費税、法人税、所得税など税制全般の改革にも取り組まねばならない。

 首相は選挙の敗北にひるまず、消費税についての党内調整を本格化させると同時に、野党に対し、引き続き超党派の協議を呼びかける必要がある。

 野党側も、これに応じ、制度設計に踏み込んだ議論を進めるべきである。

 ◆消費税が敗因ではない

 首相は13日の閣議で、参院選での与党の過半数割れについて「唐突な感じを与えてしまった」と述べ、消費税問題が敗因につながったとの認識を示した。

 だが、「消費税率10%」を参院選公約に明記した自民党は議席を伸ばした。

 読売新聞が参院選後に実施した世論調査では、消費税率の引き上げが必要と答えた人は6割以上に上っている。消費税率アップの必要性についての意識は、今回の選挙の前後で全く変化がない。

 有権者が問題にしたのは、消費税率引き上げそのものではなく、一貫性を欠いた首相の言動だ。

 首相は、なぜ消費税率を上げるのか、増税分を何に使うのか、といった根本的な問題に明確な方針を示すことができなかった。

 増税批判で苦境に立たされると「次の総選挙まで1円たりとも上げない」と発言を修正するなど、最後まで軸が定まっていない印象も与えた。

 ◆民主は党内合意急げ

 国民の信頼を取り戻すために民主党が取り組むべきは、消費税率引き上げに関する党としての考え方を早急にまとめ、丁寧に国民に説明することである。

 今後の議論では、低所得者対策などが一つの論点となる。

 消費税額を還付する案が浮上しているが、所得に応じて対象者をどう線引きするか、対象者の所得をどこまで正確に把握できるかといった問題がある。

 生活必需品などの税率を低く設定する軽減税率の導入も選択肢だ。欧州の軽減税率は新聞や書籍、食料品などに適用されており、検討に値しよう。

 消費税率を引き上げる目的については、少子高齢化の進展で増大する年金、医療、介護などの社会保障費を賄うことが主眼であることを明確にすべきだ。

 政権交代後、民主党は無駄減らしで財源を捻出(ねんしゅつ)するとしていたが、10年度予算編成で、歳出削減の効果はわずかだった。

 一方、税収確保の点では、所得税や法人税が景気動向に大きく左右される以上、安定した財源となるのは国民が広く負担を分かち合う消費税しかない。

 消費税増税で社会保障制度を立て直せば、将来不安の解消で消費を刺激する効果も出てこよう。

 ◆法人税引き下げを

 税制改革論議では、財政や社会保障を安定させて安心社会を実現し、日本経済の活力を維持する視点が不可欠だ。

 日本の法人税の実効税率は40%超で、経済協力開発機構(OECD)加盟30か国の平均26%と比べてかなり高い。企業の国際競争力を強化するためには、法人税率の引き下げが急務だ。

 その減収を補う措置として、役割を終えた政策減税を整理するなど、11年度税制改正に向け議論を急ぐべきである。

 参院選で首相は、高所得層を中心に負担を重くする所得税の累進性の強化を示唆した。

 だが、所得税の最高税率(40%)は国際的に高水準で、適用される納税者は少なく、増収効果はあまりない。むしろ、消費税の税率アップが大衆増税になるとの批判をかわすのが狙いだろう。

 所得税の最高税率の引き上げは国民の働く意欲をそぎ、経済社会の活性化に逆行する。様々な所得控除の見直しが先である。

2010年7月14日01時38分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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