HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 12 Jul 2010 22:14:24 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:<人間ならば誰にでも現実のすべてが見えるわけではない。多く…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年7月12日

 <人間ならば誰にでも現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない>。そう看破したのは、古代ローマの政治家ユリウス・カエサルだ▼都合のいいことは重視して、悪い材料は軽くみてしまうのが人間の性(さが)なのだろう。参院選の開票速報を見ていると、見たくない現実を「落選」という結果で突きつけられた候補者たちの歯ぎしりが聞こえるような気がした▼政権交代から約十カ月。民主党政権に下されたのは、「過半数割れ」という厳しい審判だった。最大の敗因は菅直人首相が唐突に宣言した「消費税増税」であることは疑いない▼国家財政の危機的状況から、消費税を含めた税制の根本的な見直し論議は必要と認識している国民は増えている。支持率の「V字回復」に自信を得た首相は、消費税アップをぶち上げても勝てるという過信があったのではないか▼増税によって、この国をどう変えるのかという根本的な議論は何もなく、党内合意もないままの見切り発車。内閣支持率が低下するとみるや、ずるずると発言は後退した。有権者は首相の不誠実さを見抜いたのだ▼増税というタブーに挑み、初めて勝利した宰相として、歴史に名を残そうという思いもどこかにあったのではないか。<見たいと欲する現実>。それだけを映そうとした首相の慢心が敗因に思えてならない。

 

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