HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17264 Content-Type: text/html ETag: "47b7b6-4370-fef67400" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 12 Jul 2010 22:21:11 GMT Date: Mon, 12 Jul 2010 22:21:06 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年7月13日(火)付

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 「通勤で混(こ)み合う電車の中の広告に、真っ赤な蛸(たこ)の画(え)があった。ねじ鉢巻きで、盃(さかずき)をもって踊ってる。えらく景気のいい蛸だ。蛸は自民党かもしれない」。往年の名文記者、門田勲のユーモラスな一節だ。高度成長期、かの党は我が世の春をうたっていた▼参院選の開票からサッカーW杯決勝へなだれ込んだテレビを見つつ、ふと大先輩の筆を思い出した。大した理由などない。党勢を伸ばした谷垣総裁の得意顔と、スペインの優勝を当てた「予言ダコ」に、記憶の水底をつつかれただけである▼ドイツの水族館のタコ「パウル君」は、いまや世界一有名な軟体動物だろう。ドイツ代表の勝ち負けを、3位決定戦まですべて的中させた。勢いに乗って他国同士の決勝も当て、「8戦外れなし」で予想屋や占師を青くさせた▼好物の貝を入れて国旗を張った箱を二つ用意し、どちらを選ぶかで勝敗を占う。当たりすぎの余波もあった。お告げ通りドイツが負けると、「食べてやる」などと方々から八つ当たりされたそうだ。人間嫌いにならなければいいが▼門田も書いたように、日本人のタコのイメージは戯画的だ。鉢巻きに口をとんがらせて、コリャコリャ踊る。だが知能はかなり高いらしい。犬なみに賢いという専門家もいる。意外な予知能力が実はあるのかもしれない▼〈占いのタコに聞きたい過半数〉と先の朝日川柳にあった。選挙が終わって聞きたいのは「ねじれ政治」の行方だろうか。右肩上がりの昭和を懐かしむ、どこか淋(さび)しき日本人に、さてパウル君は「勝ち」をくれるか。

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