HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17254 Content-Type: text/html ETag: "4ca40-4366-742f4a40" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 10 Jul 2010 20:21:43 GMT Date: Sat, 10 Jul 2010 20:21:38 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年7月11日(日)付

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 草笛といい草摘みといい、草という字はどこか明るい郷愁を誘う。W杯が大詰めの南アフリカから、小紙記者が「草サッカー」の記事を書いていた。日本の報道陣の即席チームと、大会スタッフらの南ア勢が一戦を交えたそうだ▼サッカーに限らず、草野球も草競馬も、「草」がつくゆえに楽しげで牧歌的だ。〈夏草やベースボールの人遠し〉の句が子規にある。風に乗って歓声が聞こえる心地がする。この「草」について辞書は、本格的なものに準ずる意味だと説明する▼ゆるく楽しむ「草」はいい。だが、プロが「草」のようでは困る。近年のそれは「草政治」だろうか。この4年で首相は5人も代わり、本格政権から遠い。新与党は腰がふらつき、閉塞感(へいそくかん)を取り払えない▼国民は程度に応じた政府しか持てない、と古くから言う。だが先日の小紙に、作家の池澤夏樹さんが「どうも政府のレベルは国民のそれを下回ってきたようだ」と寄せていた。「われわれの実力からすればもう少しましな政府は持てないものか」と。肯(うなず)く向きもおられよう▼その思いを託す参院選投票日である。かつての「郵政選挙」や去年の「政権交代」のような、イエスかノーかの熱狂はない。一票の意味はより複雑で多様だ。結果で政治はどう変わるのか。悩ましいだけに、有権者は試される▼子規の句をもじるなら、本土の空気は〈夏草や普天間問題はや遠し〉と相成った。政治とカネもしかりである。何事も忘れやすく、ぶれやすいのさ。政治屋サンに舌を出されぬよう、吟味の眼(まなこ)を研ぎすます。

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