HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 09 Jul 2010 20:13:10 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:高速道路 本当に無料化できるか:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

高速道路 本当に無料化できるか

2010年7月9日

 高速道路無料化の社会実験が進むが、民主党が参院選の公約で掲げる段階的な原則無料化は実現できるのか。受益者負担の原則や格差など問題点を整理し、将来の見通しを明示すべきではないか。

 高速道路三十七路線五十区間無料化の社会実験が進んでいる。国土交通省の調べで、第一週月−金曜の交通量は実験前に比べ73〜80%増、初週末の土曜平均67%増、日曜78%増だ。地方路線の休日上限千円の適用区間が多く、大混雑が避けられた。

 だが、民主党の参院選公約にある段階的な原則無料化への道筋はつくのか。

 高速道路の約二割で行われる来年三月までの社会実験にすら、一千億円の予算が投じられる。全面的無料化には、毎年一兆三千億円が必要と試算される。

 旧道路公団の分割民営化で、高速道路は日本高速道路保有・債務返済機構が保有し、民営化した各高速道路会社が維持・管理する。会社は、利用者が払う通行料で維持・管理に当たるほかリース料を機構に支払い、それが旧公団時代に高速道路建設に借り入れた債務返済に充てられる。利用者による受益者負担の原則である。

 債務残高は二〇〇八年度末、三十一兆三千八百億円に上る。原則無料化すれば、債務返済、維持・管理費用すべてを国が肩代わりするほかない。税金を投入、車や高速利用の有無を問わず全国民が負担するか、国債増発で次世代につけを回すかである。有料路線を残せば負担の格差も生む。

 南欧やスカンディナビア諸国など有料化導入済みか、検討中の国も少なくない。過去の巨額の債務返済、将来の管理費など負担のあり方を示さずに、安易に無料化を唱えるのは無責任ではないか。

 自民党は、無料化せず割引制度の維持、拡充を公約する。目立つのは昨年三月始まった地方の普通車などの休日上限千円だが、これも十年間で国費三兆円を投じる。ほかに深夜、通勤、大口・多頻度などの割引があり、一部は国費で穴埋めされる。

 割引がETC搭載車に限られるのがまず不公平の極みだ。物流コストの低減、観光客増加など地域振興に効果のあるものを中心に割引制度の洗い直しを行い、割引は高速道路会社の企業努力によるのを原則とすべきではないか。

 財政危機をいいながらばらまきを続けることや、耳に快いが将来のはっきりしない言説に対し、厳しい判断を下す時であろう。

 

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