日本時間十二日未明の決勝でついに熱狂に幕を下ろすサッカーW杯。おかげで割を食ったのは、時期が重なったテニスのウィンブルドン選手権だろう。報道でも例年に比べれば影が薄かった▼そのW杯では、明らかな誤審が何度かあって話題になった。確かに入っていた同点ゴールが認められず、ずるずる敗退したチームもあり「試合の流れを変えた」と監督は怒りを爆発させた▼そんな訳で、国際サッカー連盟の会長もついに、これまで否定的だった機械的なゴール判定の導入に前向きの発言をした。思い浮かぶのは近年、ウィンブルドンが採用したシステムである▼どんな仕掛けか知らないが、選手が求めると、CG画面のようなボール軌道が再生される。結果、人間の審判のアウトが機械のインに翻されるようなことがよく起きる。確かに、判定ミスでゲームが台無しになるのは歓迎できない。だが、まちがう者、汝(なんじ)の名は人間、だ。判定を機械に委ねれば正確ではあっても人間くささは薄れる▼ある審判が言っている。「もし選手がサッカーをプレーする中でミスを犯すのが許されないのであれば、その選手は競技する種目を変えなくてはならないだろう。審判に関しても、それは当てはまる」(岩永修幸編『蹴球(しゅうきゅう)神髄』)▼ボールは丸く、使うのは足。無数の“まちがい”こそが、サッカーの輝きだという気もする。