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7月7日付 編集手帳

 うまい句ではない。厳密には俳句かどうかも怪しいが、作者の血肉が凝縮されているようで忘れがたい一句がある。〈銀漢(ぎんかん)て 銀河のことか くだらない〉。梅棹(うめさお)忠夫さんの作である◆ある人に俳句の弟子入りをしたものの、この句で破門されたと『裏がえしの自伝』(講談社)で回想している。「言葉の気取った言い換えを楽しんでいる暇はない」と怒っているかのようで、いかにも地球を(また)に掛けた行動派の文化人類学者らしい◆世界の文明と民族文化を独自の視点で解明し、『文明の生態史観序説』や『知的生産の技術』などの著述で知られる梅棹さんが90歳で死去した◆失明したのは65歳のときである。以後3年間に口述筆記で世に送った著作は40冊を数え、“月刊うめさお”の異名をとった。再訪したい場所は? 「まだ行ったことのない場所がたくさんあるんだ」。最晩年まで、問われるたびにそう答えたという◆「わが最大傑作」と著書に掲げた一句を。〈燃えろ 燃えろ 銀河よ燃えろ 俺はわたる〉。地上の山脈を、草原を、砂漠を踏査して今、銀河の探検に旅立った――そう思わせる人である。

2010年7月7日01時51分  読売新聞)
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