HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 07 Jul 2010 03:12:45 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ゆうパック遅配 金融偏重のゆがみだ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

ゆうパック遅配 金融偏重のゆがみだ

2010年7月7日

 宅配便「ゆうパック」の大規模遅配が起きた。「ペリカン便」を吸収したので荷さばきが混乱したでは情けない。郵貯資金の運用に偏った郵政見直しに問題はないのか。利便性の向上は看板倒れだ。

 「大量の荷物に慌てた」。郵便事業会社の鍋倉真一社長は三十二万個の遅配をこう釈明した。しかし今月一日の日本通運ペリカン便吸収による取扱量急増は織り込み済みのはずだ。準備不足では済まされない。

 国内三位のペリカン便と四位のゆうパックは郵政民営化後の二〇〇八年六月、ともに不採算だった宅配便を統合し、共同出資のJPエクスプレスを設立した。ところがその後、自公政権の鳩山邦夫総務相らが収益計画が甘いなどと問題視し、統合計画は宙に浮いた。

 これを機に顧客離れが相次ぎ、毎月五十億円の赤字、今や累積損失が一千億円に達する。郵便会社は電子メールの普及も重なり、一〇年度は八年ぶりに営業赤字に転落する見通しだ。今回はいわば統合の仕切り直し。宅配便を稼ぎ頭に育てたいのだろうが、それにしても準備がお粗末に過ぎる。

 コストを節約しようと両社の集配システムを併存させたまま、職員に機器操作の満足な訓練もせずに見切り発車してしまった。中元の繁忙期をはずすくらいの工夫は、専門家でなくても思い浮かぶではないか。鍋倉社長も、親会社・日本郵政の斎藤次郎社長も元官僚だ。お役所仕事と指弾されても仕方あるまい。

 民主党が政権公約に優先成立を掲げた郵政改革法案は連立与党・国民新党の選挙基盤、全国郵便局長会の要望に応えたものだ。郵便局長らが嫌がる合理化に目をつむり、郵貯限度額の引き上げで郵便局の手数料を増やし経営を安定させる。政治色の濃いビジネス形態では職員の資質向上など期待できない。いびつな金融偏重が大規模遅配というゆがみの根源にある。

 既に一部顧客らが今回の失態に嫌気し、ゆうパックから離れ始めた。利用者から目をそらせば市場から淘汰(とうた)される現実を直視すべきだ。40%近いシェアを維持する業界トップ、ヤマト運輸の宅急便は、集配拠点をきめ細かに設けて配達時間を厳守するなど、徹底した顧客サービスの向上に努めている。参考になるだろう。

 失った信頼の回復には人材教育など経営の基本動作が欠かせない。与党も、日本郵政も、利用者利便を見直しの柱に、あらためて郵政見直しと向き合うべきだ。

 

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