前原誠司国土交通相が大量の天下りを受け入れている建設弘済会の解散と空港環境整備協会の規模縮小方針を表明した。いずれも異論はないが、目前に迫った参院選への思惑が見え隠れしている。
建設弘済会は河川や道路の維持管理、工事発注に伴う積算や入札手続き支援、用地交渉などをする公益法人だ。全国八つの地方整備局ごとに設けられ、国交省から独占的に業務を受注している。
同様の事業をしている九州地方計画協会と合わせて約四千三百人の職員を抱え、うち国交省OBの天下り組が五百四十八人に上る。業務受注と天下り受け入れが事実上セットになっている典型的な天下り法人だ。
前原国交相はこれら九法人に対して三年以内の解散を求めた。退職者には法人が積み立てた資産や内部留保から退職金を支払ったうえ、残金は国庫に返納させる。
一方、空港環境整備協会は全国の空港で駐車場を運営しており、職員の半数強に上る百十五人が国交省などからの天下りだ。こちらは航空機騒音の調査研究事業を残して事業を縮減する。
建設弘済会も空港環境整備協会も独占的な事業形態が割高な事業費や駐車場料金に跳ね返って、ひいては政府予算の無駄や非効率、消費者負担につながっていた。
八つの建設弘済会が国から請け負っていた業務の契約金額は天下り職員一人当たりで年間約九千万円になる(二〇〇九年度)。つまり契約金のちょうど一割で、ほぼ一人分の給料が賄える計算だ。
言い換えれば、国交省は毎年の業務契約という「お土産=給料の源泉」付きで役人を建設弘済会に引き取らせていた形になる。そうした仕組みを独占的な事業形態が裏打ちしていた。
先の事業仕分けでは、業務の民間委託など競争促進を求めるにとどまったが、今回は一挙に解散という荒療治に出た。だが、額面通りに受け取れない。いかにも選挙目当てのタイミングだからだ。
解散となれば退職者の再就職が問題になる。受け入れ先はあるのか。ハローワーク行きを求めるのか。菅直人政権は独立行政法人などに公務員の現役天下りを認める閣議決定をしたが、今回の解散方針と矛盾する面もある。
本気で解散を求めるなら、閣僚の会見発言ではなく内閣として正式に閣議決定してはどうか。消費税引き上げ方針の余波を受けて内閣支持率が下落する中、口先だけの天下り先解散ではだめだ。
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