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2010年7月7日(水)付

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相撲中継中止―改革なければ再開もない

NHKが大相撲名古屋場所の生中継を取りやめた。50年あまり前のテレビ中継開始以来、初めてのことである。「国技」とされる大相撲は、当然のように生中継で全国に伝えられてきた[記事全文]

ゆうパック遅配―民営化の原則に立ち返れ

お粗末な失態の陰に、大切な顧客や働く人々への配慮を欠いた経営ぶりがうかがえる。民営化の流れを押し戻そうとする「郵政見直し」や、官僚体質と無縁ではないだろう。あるいは、金[記事全文]

相撲中継中止―改革なければ再開もない

 NHKが大相撲名古屋場所の生中継を取りやめた。50年あまり前のテレビ中継開始以来、初めてのことである。

 「国技」とされる大相撲は、当然のように生中継で全国に伝えられてきた。NHKによって相撲に親しんできた人は多い。しかし、野球賭博問題などで大相撲のあり方が根本から問い直されている今、中継の取りやめは妥当な判断だ。

 角界はこの重い決定を、再生への厳しい試練と受け止め、根本的な改革に取り組まなければならない。

 生中継は、報道番組とは異なり、NHKが放送権料を日本相撲協会に払って流している番組だ。これは年間25億円を超えるといわれる。100億円前後という協会の年間収入の大きな柱の一つだ。

 だが、放送権料は元をたどれば視聴者の受信料だ。これが力士の給与の一部となり、賭博の賭け金として使われ暴力団に流れていたとしたら、見逃せない。

 野球賭博への暴力団の関与が疑われている段階では、中継を心待ちにするファンの楽しみよりも公共放送としての立場を優先させたのだろう。

 問題は野球賭博にとどまらない。昨夏の名古屋場所では、テレビカメラに映りやすい正面の特別席で観戦していた暴力団関係者の姿が放送された。今年の初場所でも土俵に近い席にいた暴力団員がテレビに映った。維持員席の券が暴力団関係者にわたった問題で、親方2人が関与していた。NHKは中継を悪用された形だ。

 NHKに視聴者から寄せられた1万3千件の声のうち、中継に反対が68%に達し、賛成は13%にとどまったという。NHKの決定は、相撲に対する視聴者の厳しい姿勢を反映したものでもある。

 ファンの楽しみも考慮して、NHKは中継のかわりに取組終了後に録画のダイジェスト版は流す予定だ。名古屋場所の放送権料の扱いは今後、相撲協会と協議するという。

 だが、暴力団などとの関係が断ち切れない限り、放送権料を支払うのは筋が通らないし、協会が支払いを求めるのであれば、ダイジェスト放送であっても見合わせるしかあるまい。また、角界が抜本的に改革されるまでは中継も再開するべきではないだろう。

 中継中止を発表した記者会見で、NHKの福地茂雄会長は角界に対し「100年に1度の危機という緊張感を持って、待ったなしの改革に取り組んでほしい」と強く求めた。

 夕飯支度の音とにおい、居間からは大相撲のテレビ中継。日本の家庭のなじみ深い光景が、この夏、いったん消える。

 それが戻ってくるかどうかは、角界の覚悟次第だ。

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ゆうパック遅配―民営化の原則に立ち返れ

 お粗末な失態の陰に、大切な顧客や働く人々への配慮を欠いた経営ぶりがうかがえる。民営化の流れを押し戻そうとする「郵政見直し」や、官僚体質と無縁ではないだろう。

 あるいは、金融分野の拡大を目指す経営陣が「本業」の郵便や物流をおろそかにしてきたせいではないか。

 日本郵政グループの宅配便「ゆうパック」で大規模な配達の遅れが発生した。本業の物流サービスを再建する大事な一歩となるべき日本通運との宅配便事業の統合が、出足からつまずいたことになる。

 統合に伴って現場の従業員を減らしたところに、お中元シーズンや参議院選挙といった事情が重なって、取り扱い個数が大幅に増えた。その結果、大都市周辺などの集配拠点で荷物をさばき切れなくなり、遅れが遅れを呼ぶ悪循環に陥った。

 経営陣の対応には、あきれるほかない。遅れが発生しても高をくくり、応援の手配も遅れた。ネット通販が広がり、宅配便の生き残り競争は配達時間の細かさや正確さにかかっている。ゆうパックは、統合を機に配達時間を細かく指定できるサービスを始めた矢先だった。イメージダウンは大きく、顧客離れも招いている。

 そもそも統合に伴う混乱などのリスクをどれだけ警戒していたのか。事業は統合するが、時間や費用のかかるコンピューターシステムの統合や設備の共通化は後回しにした。そのうえ、現場の社員が切り替えに慣れるための訓練やテストがおろそかだったという指摘が相次いでいる。

 厳しい競争の中で顧客の信頼を財産にするしかないサービス業としては、あまりにも危機感が薄かった。現場の実情を把握せず、トップの上意下達で乗り切ろうとする「官業」意識がうかがえる。こんな調子では、競争力の強化など夢のまた夢だろう。

 郵政と日通の宅配便統合は、西川善文・前社長の時代だった2007年10月に打ち出されたが、迷走した。合弁会社を作って日通が事業を移管したものの、総務省の認可が下りず、郵政側は中途半端な形で事業を続けて1千億円近い累積損失を招いた。

 昨秋就任した大蔵官僚OBの斎藤次郎社長は、郵政官僚OBの鍋倉真一氏を郵便事業会社の社長に起用。最終的に郵政が合弁会社の宅配事業を吸収した。赤字垂れ流しを早く止めるため、内部の異論に耳を傾けず繁忙期のただ中での統合を強行した。

 先の国会で廃案になった郵政見直し法案では、郵便や物流事業の不振を補うためにも、銀行や保険など金融分野の拡大が当然とされていた。

 今回の事態は、金融重視と官業回帰ムードを改め、本業と民営化の大原則に立ち返るべきことを示している。

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