HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 38322 Content-Type: text/html ETag: "104c51-1615-a52963c0" Expires: Mon, 05 Jul 2010 21:21:32 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 05 Jul 2010 21:21:32 GMT Connection: close 著作権の制限 知的財産は厳格に守るべきだ : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
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著作権の制限 知的財産は厳格に守るべきだ(7月6日付・読売社説)

 知的財産権は厳格に守る、という著作権法の大前提が崩れていくのではないか。そんな懸念を抱かせる提言だ。

 文化審議会の小委員会は、著作者の権利を制約する「権利制限の一般規定」(日本版フェアユース規定)の導入を求める「中間まとめ」を発表した。

 著作権法は、許諾を得ずに著作物を利用できる事例として、個人が私的目的で行う複製や、報道・研究目的での引用などを具体的に列挙している。

 これに対し米国では、「公正な利用」ならば、著作物を自由に利用することができる。いわゆるフェアユースの制度だ。著作物の要約などを公正な利用として許容することが、社会のより大きな利益になるとの考えが根底にある。

 公正か否かは、裁判所が著作物の使用目的や市場への影響などから総合的に判断する。100年以上に及ぶ判例の蓄積もある。

 例えばグーグル社は、フェアユースを根拠に、無断で書籍のデジタル複製を進めた。全米作家組合などが裁判に訴え、一時は日本の著作者への影響も懸念された。権利者には不利な制度である。

 ネット技術の発展により、著作物の利用形態は急速に変化している。必要に応じて個別規定を改正するよりも、米国型の一般規定を設けた方が、著作物の利用が円滑に進むとの意見もある。

 今回の「中間まとめ」は、米国型フェアユース規定の導入は退けた。一方で、人物写真の背景に美術作品が写り込む場合や、音楽再生技術の開発の際に必要な複製などに限って認める「権利制限の一般規定」を設けることとした。

 例えば、著作物の「付随的」利用を認めるといった、抽象的表現の規定を想定しているようだ。可能な分野から一般規定を導入するということなのだろう。

 しかし、様々に解釈されかねない規定は、知的財産権の侵害につながる恐れがある。

 やはり、著作物の利用は学校教育や報道など公共性の高い分野に原則として限られるべきだ。ビジネスのための利用なら、まず権利者の了解を得るのが筋だろう。

 著作権法の内容が現実に合わなければ、必要に応じ個別規定を改めればよい。近年は、法改正も迅速に行われるようになった。

 欧州の独仏なども「権利制限の一般規定」は導入していない。

 知的財産は人間の創造活動の賜物(たまもの)でもある。その侵害を助長するような法改正は、将来に大きな禍根を残しかねない。

2010年7月6日01時43分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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