HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 06 Jul 2010 00:14:53 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:少子化対策 子育てできる社会示せ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

少子化対策 子育てできる社会示せ

2010年7月6日

 子供や子育て家庭には、保育サービスや貧困対策など多くの支援が必要だ。各党は参院選の公約にさまざまな子育て支援策を掲げるが、政策メニューの羅列では実効性に疑問がある。

 こんな話を聞いた。

 「朝ご飯食べたのか」。ある小学校で、顔色が悪い男子児童に担任が声をかけた。児童は「カップめんのスープを飲んだ」と言う。けげんに思った担任が「めんは?」と聞いた。返ってきた答えに、強いショックを受けた。

 「めんはお兄ちゃんが食べた」

 児童は母子家庭だ。母親は昼と夜に仕事を掛け持ちする。経済的にも精神的にも余裕がなく、子供たちと満足に向き合えない。朝食抜きの日も多いという。

 厚生労働省によると、十八歳未満の子供の七人に一人、ひとり親世帯の半数は貧困状態にある。すべての子供の育ちを支えるために導入された子ども手当は、この児童の家庭も手助けするだろう。

 同手当は「社会で子育て」との重要なメッセージが込められている。この考えを後退させたくないが、参院選での各党公約は政策の羅列に見える。

 民主党は、子ども手当の上積み分は、保育所整備などに充てられるようにした。各党は保育所整備や幼児教育無償化などサービス分野の充実を重点公約に掲げた。医療費無料化、公教育充実、妊婦健診費用の負担軽減なども並ぶ。

 待機児童対策の保育所整備は、早急な対策が求められている。同時に貧困問題や、子育ての孤立が背景にある虐待への対策も子育て支援として緊急度は高いはずだ。

 収入と雇用が不安定な非正規労働者が多い若者の非婚化は、今や少子化の大きな要因だ。若者の就労支援は、子育て支援としても本腰を入れるべきだ。各党の公約はこうした課題への深刻さをとらえていない。

 財源が限られたなかで効果を上げるには、どんな支援にどう優先順位をつけて実行するのかが問われる。それには支える社会の未来像が必要になる。

 出生率は二〇〇九年一・三七と前年と同じだった。少子高齢化が進めば社会保障は「今は現役三人で高齢者一人を支える騎馬戦、五五年には一人が一人を支える肩車状態になる」(長妻昭厚労相)。

 社会を支える人材の減少を止める少子化対策は、国の存亡にかかわる。子育てを社会で支えたい、と思える未来像を示すべきだ。

 

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