HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17244 Content-Type: text/html ETag: "595746-435c-42a31c40" Cache-Control: max-age=4 Expires: Mon, 05 Jul 2010 20:21:28 GMT Date: Mon, 05 Jul 2010 20:21:24 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年7月6日(火)付

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 馬の名で浮かぶ時代がある。シンザンなら1960年代の高度成長、それが終わる70年代を連れてくるのは怪物ハイセイコーか、悲劇のテンポイントか。シンボリルドルフで80年代を、ナリタブライアンで90年代を思う人も多かろう▼昭和から平成のバブル期を駆け抜けたオグリキャップが、余生を送る北海道で死んだ。天寿に近い25歳だった。放牧中、右後ろ脚を骨折した状態で見つかったという。ぬいぐるみが出回るほどのアイドルは、女性を競馬に呼び込んだ立役者でもある▼デビューの地、岐阜の笠松競馬では「東海に敵なし」。中央競馬に移っても勝ち続けたが、未登録の日本ダービーなどは走れなかった。不遇への同情と、実力一つで地方を出、中央のエリートたちを負かす物語がファンを熱くした▼衰えが見え始めた90年、秋の重賞で惨敗が続き、迎えた有馬記念は引退レースに。最後を見届けようと18万人が埋めた中山競馬場で、オグリは21歳の武豊騎手に手綱を任せ、有終の美を飾る。できすぎたラストランを、大観衆の喝采と涙が包んだ▼最終コーナーから一気の加速で、通算32戦22勝。だが、種馬としての実績は寂しかった。二流の血統から生まれ、七光りも残さない「一代限り」に覚える快さは、世襲への食傷ゆえだろう▼灰色の芦毛(あしげ)は年齢を重ねるごとに白さを増す。週末の昼下がり、脚を傷め、人知れず緑の上に横たわる白馬を思う。その耳に、地鳴りのような「オグリコール」は響いていたろうか。時代の音は、夢をありがとうの叫びは届いていたか。

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