HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Sat, 03 Jul 2010 22:15:02 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:落語を毎日聞ける寄席は東京に四カ所ある。一番小さな池袋演芸…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年7月4日

 落語を毎日聞ける寄席は東京に四カ所ある。一番小さな池袋演芸場は、どこに座っても演者の息遣いが伝わる距離の近さが魅力だが、そこの高座で「芸」をやることになるとは思わなかった▼先月あった落語芸術協会の三笑亭可龍さん、春風亭傳枝(でんし)(瀧川鯉之助改め)さんの真打ち披露興行はほぼ満席だった。異変はトリの一つ前の出番の時に起きた。人気の漫才コンビの一人が時間に間に合わなくなるハプニング▼すでに出番を終えていた太神楽(だいかぐら)の鏡味正二郎さんが再登場した。どうなるんだと最前列で面白がっていると、突然、「上がってください」とご指名があった。傘に球を載せて回す曲芸をやってみろというのだ▼舞台に立つと、頭は真っ白。教えられた通りに腰を落とし傘を回す。緊張でお客さんの顔は見られないが、傘の上の紙風船は案外うまく回ってくれた。温かい拍手が身に染みた▼ドタバタの後、トリの傳枝さんがきっちりと演じたのは「蒟蒻(こんにゃく)問答」。蒟蒻屋を和尚と勘違いした修行僧が、勝手な思い込みで禅問答に敗れる噺(はなし)で、半端な知識や権威を笑い飛ばす江戸の庶民の心が通底にある▼昔も今も地に足着いた庶民は賢明だ。ごまかしやうそを直感的に見抜く。参院選投票日まで一週間。候補者の皆さん。できないことをできると言い募る曲芸は要りません。どうか、笑い飛ばされない誠実な訴えを。

 

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