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7月2日付 編集手帳

 志ん朝、談志、円楽といった面々がのちに巣立っていく『若手落語会』などを企画し、“天才プロデューサー”とも呼ばれた湯浅喜久治(きくじ)は繊細な美意識をもつ人だったらしい。悪筆をめぐる挿話を、作家の安藤鶴夫が『巷談(こうだん) 本牧亭』(河出文庫)に書き留めている◆へたな自分の字を見るのが我慢ならず、字のうまい友人をまめに訪問してはメモを読み上げ、自分の手帳に自分のスケジュールを書き入れてもらっていたというから、相当なものだろう◆書き始めた手紙を途中で読み返し、お粗末な字を恥じてペンを投げ出す――悪筆を口実に不義理を重ねてきた身を省みて、湯浅氏に共感を覚えぬでもない◆陰暦7月の異称「文月(ふみづき)」は一説に、七夕の竹に付ける(ふみ)が語源という。手紙にゆかりの深い月である。夏休みを前に行楽の日程を立てはじめた方もおられるに違いない。自分のことを棚に上げて申すなら、旅先から絵はがきを出す用意に、住所録を旅装に加えるのもよろしかろう◆〈うるはしくかきもかかずも文字はただ読みやすくこそあらまほしけれ〉。明治天皇の作と聞く。小欄推奨“今月の歌”である。

2010年7月2日00時59分  読売新聞)
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