一昨年秋の金融危機後、悪化した完全失業率や有効求人倍率、非正規労働者の失職数など雇用は厳しい状況が続く。参議院選挙で各党は雇用対策強化を掲げるがもっと労働者本位の施策が必要だ。
雇用と物価は経済の体温計だ。両統計の低迷を見れば日本経済が体調不良にあることがよくわかる。失業者の増加と賃金低下が消費不振と物価下落をもたらし、再び雇用悪化を招くデフレ状況を生んでいる。
とくに雇用は深刻だ。五月の完全失業率は前月比0・1ポイント上昇して5・2%と三カ月連続で悪化した。有効求人倍率はやや改善したとはいえ〇・五〇倍。完全失業者は約三百五十万人もいる。
自公政権時代から政府は何度も緊急対策を打ち出してきた。
失業急増を防ぐため雇用調整助成金を中小企業にも拡大した。失業者への安全網強化では雇用保険の適用拡大や住宅・生活支援の拡充、月額十万〜十二万円の生活費を給付する職業訓練制度の創設、さらに介護や観光などでの緊急雇用創出事業などもある。
緊急対策は雇用危機をしのぐ効果があった。今後は日本経済の活性化と、労働者が安心して働けるための抜本策が必要だ。
参院選での各党公約を見ると雇用対策はさまざまである。
政権政党の民主党は「新成長戦略」で環境や健康分野などで五百万人の雇用創出を打ちだした。個別対策では「求職者支援制度」の法制化を取り上げている。
また自民党は各種の成長戦略を実行して今後十年間で雇用者所得を五割増やすという。新卒者をトライアル雇用する企業への補助金支給制度の創設も掲げた。
公明党は非正規労働者を正規雇用した企業への奨励金の拡充、国民新党は若者就職基金の創設、社民党は登録型と製造業派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案の早期成立、そして共産党は時給千円以上を目標に最低賃金引き上げ−などである。
政策の方向性は結構だが、総花的・対症療法的と言える。経済と産業・企業に活力を与えるには、政府による新事業創造と雇用創出策の強化が重要だ。
同時に労働政策を見直して非正規雇用の拡大に歯止めを掛ける。労働者の三人に一人が非正規では経済も企業も元気が出まい。同一価値労働同一賃金や最低賃金の着実な引き上げを行う。働く者をもっと大切にする施策を徹底することが、日本の活性化につながる。
この記事を印刷する