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2010年6月30日(水)付

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年金基本原則―与野党が歩み寄る契機に

国政選挙のたび民主党が看板政策に掲げてきた新たな年金制度について、菅政権が柔軟な基本原則をまとめた。これを与野党が話し合いを進めるきっかけにしてほしい。全国民が一つの制[記事全文]

G20―「例外日本」の情けなさ

先進国は2013年までに財政赤字を半減させるが、日本は例外とする。カナダでのG20サミット(20カ国・地域首脳会議)が、そんな宣言を発した。情けない扱いに、いつまでも甘んじてはいられない。[記事全文]

年金基本原則―与野党が歩み寄る契機に

 国政選挙のたび民主党が看板政策に掲げてきた新たな年金制度について、菅政権が柔軟な基本原則をまとめた。これを与野党が話し合いを進めるきっかけにしてほしい。

 全国民が一つの制度に加入し、最低限の年金額を保障することなど大まかな考え方を示しただけで、かつての「税方式による月額7万円の最低保障年金」といった具体的記述はない。

 党のマニフェスト(政権公約)と比べるとあいまいになったが、むしろこれによって、与野党が過去の主張にとらわれずに歩み寄るための環境ができたともいえる。

 年金制度には、さまざまな問題がある。自営業中心と考えられてきた国民年金は、厚生年金に入れない非正社員が4割近くを占め、保険料をきちんと払えない人も少なくない。無年金や低年金で老後の生活に困るという人が増える心配もある。

 少子化で、将来受け取る年金額はどこまで下がるのか。生活保障の役割を担えるのか、といった問題もある。

 解決策については、さまざまな考え方が成り立つ。民主党のような最低保障年金という案もあれば、自民、公明両党が提案しているように、所得に応じた保険料減免と税金による補助を組み合わせ、基礎年金が満額受給できるようにする方法もある。いずれにせよ、低所得層に絞った対策から講じていくのが現実的ではないか。

 財政の制約も考えねばならない。民主党はかねて最低保障年金の財源に消費税を充てると主張していた。しかし、国の財政が危機にあることや、他の社会保障分野に必要な費用も考えれば、年金だけに巨額の税収を投入するのは難しい。

 看板政策にこだわり過ぎて、地域医療の立て直しや介護の現場で働く人たちの処遇の改善、保育所の整備などを後回しにすることになっては、国民の安心にもつながらない。

 この際、無年金、低年金対策や低所得高齢者対策など、与野党で一致できることから一つずつ改革を進めていってはどうだろう。

 年金制度の一元化にしても、自営業者も含めて一つの制度にするのが良いかどうかは、意見が分かれる。まずはサラリーマンが加入する厚生年金と公務員が入っている共済年金の統合や、所得がつかめる非正社員には厚生年金に入ってもらうことから始めるほうが現実的ではあるまいか。

 お互いの主張にこだわるあまり、対立が深まって改革が前へ進まなければ、困ってしまうのは国民だ。

 新しい施策にどれだけお金を使えるのか。年金、医療、介護、子育て支援など、全体のバランスをどうとるのか。財源を念頭に置きながら各政党が現実的な対応を考えるべき時だ。

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G20―「例外日本」の情けなさ

 先進国は2013年までに財政赤字を半減させるが、日本は例外とする。カナダでのG20サミット(20カ国・地域首脳会議)が、そんな宣言を発した。情けない扱いに、いつまでも甘んじてはいられない。

 まだふらついている景気の浮揚を重視する米国と、財政再建を優先したい欧州連合(EU)諸国。首脳たちは「成長に配慮した財政健全化」という表現で妥協した。

 成長は重視するが、各国の状況に合わせて財政を引き締めていく。それによって市場の信認を得られ、成長も持続する、との考えだ。

 経済成長と財政健全化の二兎(にと)を追うのは厳しい道のりではあるが、どちらも欠かせない以上、追い求める姿勢は共有するしかない。先進国の協調が乱れているとみられれば、市場で新たな攻撃の材料にもなる。

 むろん成長重視といっても、むやみに高い成長を追い求めるべきではないことは言うまでもない。

 米国の過去十数年の成長率は、ITバブルや住宅バブルによって底上げされていた。米国がかつての感覚で景気回復を図ると、再び世界にさまざまなひずみをもたらすことになる。

 欧州でも、スペインやアイルランドといった周辺国でバブルが発生していたため、欧州統合のほころびがみえなかった面がある。そうした過ちを繰り返さないためにも、景気への悪影響を最小限にとどめつつ、財政再建を進めていくことが必要だ。

 米国も、中期的な財政再建の必要性は認めている。それゆえに赤字半減で一致したのだが、そこで取り残されたのが、国内総生産(GDP)の2倍近い借金を抱える日本だった。

 日本が年間40兆円を超す財政赤字を13年までに半減させようとすれば、歳出を増やさない場合でも、消費税9%分に相当する増税をする必要がある、との試算が成り立つ。

 デフレ下でこんなに急激な増税策をとるのは現実的でない。だからこそ早くデフレを克服し、財政再建に乗り出したいところだ。

 国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化するという菅政権の目標は、各国に比べて甘い。強い経済、強い社会保障を実現するためにも、消費増税などの税制改革を織り込んで、強い財政をつくらなければいけない。

 欧州経済に対する不安も手伝って、日本の国債は市場で買われている。それは、菅政権が消費増税の方向を打ち出し、日本が財政再建に踏み出したと評価されているからでもある。

 参院選情勢が厳しいからといって、増税への意思をあいまいにすれば国際社会で失望を買い、「例外」扱いを卒業する展望も失われる。

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