HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 28 Jun 2010 23:14:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:JR不採用和解 23年の恩讐超えたい:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

JR不採用和解 23年の恩讐超えたい

2010年6月29日

 二十三年もの長き“闘争”だった。旧国鉄分割・民営化に伴う国労組合員らのJRへの不採用問題で、和解が成立した。今後は組合員の雇用が最大の焦点となる。恩讐(おんしゅう)を超えた話し合いを望む。

 戦後最大の労働問題といわれた。一九八七年の分割・民営化でJRに採用されず、旧国鉄清算事業団にも解雇された国労組合員ら約九百人が、同事業団を引き継いだ「鉄道・運輸機構」を相手に損害賠償などを求めていた。

 最高裁で一括和解した内容は、同機構側が一世帯あたり二千二百万円の解決金を支払うことなどだ。国際労働機関(ILO)が過去に何度も「公正な解決」を勧告してきたことを踏まえれば、今回の不採用問題の決着は意義が大きいといえる。

 そもそも国鉄改革にあたって、「一人も路頭に迷わせない」と政府は公言していたが、その実態は大きく異なった。原告の大半を占める北海道や九州では、JRへの採用率は約40%にすぎなかった。国鉄改革という国策の犠牲者ともいわれる所以(ゆえん)だ。

 「国労差別だ」と訴え続け、原告たちはアルバイトやカンパなどを頼りに、二十余年を生きてきた。国労側によれば「平均月収は十七万円程度」で、和解は人生の一つの区切りだ。

 訴訟も紆余(うよ)曲折を経てきた。二〇〇三年に最高裁は「JRは使用者にあたらず、不当労働行為の責任は負わない」と判示した。

 同機構を相手にも五件の訴訟が起こされ、昨年三月には東京高裁が国労差別を認定し、一人あたり五百五十万円の慰謝料支払いを命じた。転機の一つだった。

 過去の政権下でも和解の動きはあったが、実を結ばなかった。鳩山由紀夫前首相時に大きく進展し、今春に政治決着をみたのは、政権交代の成果だ。

 もっとも、かつての過激な活動に批判的な目を向ける人もいる。不本意な広域転勤を受け入れた人らからは、「ゴネ得」という声が上がるかもしれない。だが、むしろ人道上の問題と考えるべきだ。

 組合員らは、なおJR各社や関連会社、自治体などへの再雇用を希望している。それに対し、JR側は難色を示しており、今後の最大の焦点となる。

 原告の平均年齢は五十六歳である。五十四歳以下の人は約三百人を数える。

 まだまだ働ける人々に、雇用の壁が立ちふさがる現状に目をつむってはなるまい。

 

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