HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 28 Jun 2010 22:13:00 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:子どもの暴力 サインを見落とさずに:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

子どもの暴力 サインを見落とさずに

2010年6月28日

 少子化が進んでいるのにキレる子どもが増えている。規範意識の低下やコミュニケーション能力の欠如を憂うのは容易だ。悩みや不安を抱えた子どものサインに気づく大人の「力」も問われている。

 今月、高校一年生の衝撃的な事件が相次いだ。いずれも教室で同級生を刃物で襲う犯行だった。

 横浜市の私立女子高校で女子生徒が隣席の同級生を包丁で刺した。刺された生徒は重体だ。「被害者がうるさくて憎かった」と警察に供述したという。山口県田布施町の県立高校では男子生徒が包丁で女子生徒の肩や腹を刺し、軽傷を負わせた。「いらいらしてやった」と供述したとされる。

 先生に手を上げる。友人を殴る。窓や花瓶を壊す。そんな小中高校生の学校内外での暴力行為がうなぎ上りに増えている。警察が介入するほどの凶行も目立つ。

 文部科学省によれば、二〇〇八年度は五万九千六百件余りで過去最悪だった。被害者の四人に一人は病院での治療が必要だったという。事態は極めて深刻だ。

 人生で最も多感な時期だ。悩みや不安、焦りを抱え、ストレスや鬱憤(うっぷん)をため込みやすい。国連児童基金の調査だと、日本の十五歳の子どもの三割が「孤独を感じている」という。先進諸国の平均7・4%を上回り飛び抜けて高い。「自分が気まずく感じる」という子どもも二割に上りトップだ。

 加害者はともに十五歳だった。周りから孤立して深い孤独感や自己嫌悪感にさいなまれていたのかもしれない。真相解明は至難だろうが、学校や家庭は警察と連携して犯行の動機を探り、教訓として生かさねばならない。

 先生や親は犯行につながるサインを見落としていなかったか。横浜市の事件の加害者と被害者はカーテンの開け閉めをめぐりトラブルになったり、席替えを希望したりしていた。山口県の事件の加害者は前夜に将来の進路について母親と口論になっていた。

 暴力行為に加え、いじめも約八万四千六百件と高止まりだ。ささいなことの裏側にこそ重大な問題が隠れている。学校や家庭、地域の大人はそんな意識をしっかりと共有することが大事だ。

 今の親は一九八〇年代の「荒れる学校」の世代だ。思いやりや忍耐を教え、しつける。子どもの気持ちに寄り添って共に悩み、考える。自らの体験を重ね合わせつつ、そうした営みの意味合いを問い直してみることも肝要だろう。

 

この記事を印刷する