HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 22 Jun 2010 22:13:32 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:訓練ボート転覆 命預かる責務忘れるな:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

訓練ボート転覆 命預かる責務忘れるな

2010年6月22日

 起きてはならない事故である。静岡県浜名湖で自然体験学習中のボートが転覆、中学生が死亡した。近年の異常気象事故の多発を忘れ、訓練を強行した学校と施設の責任を厳しく問うべきである。

 児童生徒が海や山の自然の中でさまざまな体験を学ぶのは、喜ばしいことだ。しかし死者を出す重大な事故を起こしては、何のための自然体験なのか。

 十八日午後三時半ごろ浜名湖で転覆したのは、カッター訓練中の愛知県豊橋市立中学校生徒が乗った四隻のうち一隻。全員が投げ出され、ボート内側に残った女子生徒一人が死亡した。

 静岡県警、国土交通省運輸安全委員会が調べを進めているが、すでにいくつかの重大な事実がわかった。最大の疑問は、気象条件を安易に考えたことである。

 浜松地方は昼すぎから相当の降雨で視界が悪く、正午すぎ大雨・雷・強風・波浪・洪水注意報が出され、午後三時からは一〇メートル超の瞬間風速も観測された。生徒たちが滞在、訓練を実施した静岡県立三ケ日青年の家の指導員の判断でボートが離岸したのは、午後二時ごろである。

 生徒が船酔いとなったのは風・波が強かったためと推測される。事故ボートは別の船でえい航中転覆した。速度の出し過ぎなどえい航方法に疑問もある。近年、局地集中豪雨や突風など異常気象による水死、けが人が続くのに、悪天候の恐れを無視、訓練を強行した軽率さが最も責められるべきだ。

 学校側は施設に、訓練実施の可否や内容を事実上丸投げしていた。ルールはさておき、自分で気象情報を把握し、天候悪化の危険があれば訓練中止を主張するのは、生徒の生命を預かる教育者の責務ではないか。

 もちろん校長が謝罪して済むことではない。豊橋市立の全中学校が行う自然体験学習は生徒の安全を第一に、実施施設の選定、学習全体を教員が参加、主導するよう見直すべきだ。

 三ケ日青年の家は、静岡県教委が指定管理者制度で民間に運営を委ねている。公募に応じた五社中一社と随意契約を結んだ。

 同県教委は当分、施設を閉所する。当然の処置である。現在の管理者が本当に業務を運営できる能力やスタッフを持つのか厳しく再検証し、管理者の地位を辞退させるか契約を解除する。場合によっては指定管理者制度を見直し、県教委が責任をもって自ら運営することも考えるべきであろう。

 

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