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天声人語

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2010年6月23日(水)付

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 ゴルフの宮里藍さん(25)が米国ツアーで今季4勝目をあげ、世界ランクの首位に立った。男女を通じて日本人初の快挙だ。ゆったりしたそのスイングに、故郷沖縄のリズムを思う。例えれば、昼下がりにつま弾く三線(さんしん)だろうか▼藍さんは本島北部の東村(ひがしそん)で生まれ育った。赤土が覆う村は耕作に向かないが、災い転じて日本一のパイナップル産地である。宮里三兄妹のゴルフも、村営グラウンドの赤土が鍛えたという▼そして、ゆるりと流れる南国の時間。父の優(まさる)さんは、地元で言うアチャーンアイサ(明日があるさ)的な風土が、スコアに一喜一憂しないプロ向きの精神力を培ったとみる。「本土」で終わらぬ才能に県民は声援を惜しまない▼世界一を育んだ「日本の亜熱帯」は観光資源でもある。米軍基地がなければ、大自然とリゾートの楽園だろう。そんな夢想を許さない、がんじがらめの現実の下で沖縄は「慰霊の日」を迎えた。本土防衛の捨て石が、20万の命と共に捨てられた日である▼65年を経て、島はなお爆音と硝煙の中にある。基地負担をどう軽くするかの算段は、日米合意で振り出しに戻った。沖縄言葉(うちなーぐち)で通じ合えるほどの関係を首相が築かない限り、普天間は動くまい。国政の関心は参院選に移り、昨日の党首討論も基地を掘り下げなかった▼沖縄タイムス紙上で、宮古島の詩人市原千佳子さんが嘆いていた。「日米共同声明は沖縄(日本)が今なお米占領下にあることを示した……我々の戦後はしつこい」と。米国とのしつこい交渉だけが、霊を慰める道である。

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