政府が新成長戦略を決めた。財政再建も強い社会保障も経済成長が前提になる。本当に必要なのは、競争を促す規制改革と内閣の実行力である。成長戦略が「絵に描いた餅(もち)」になっては困る。
政府が十八日に閣議決定した新成長戦略は二〇二〇年度までの平均で名目3%、実質2%の経済成長を目指している。これまでの実績を見れば高い目標のようだが、欧米先進国と比べても、けっして達成不可能な水準とはいえない。
財政再建のためにも、増税の前に高い名目成長を実現して税収を増やす方策が不可欠だ。その点で、戦略が法人税引き下げを明確に打ち出したのは正しい方向である。
目先は税収が減ったとしても、税率引き下げによって設備投資が拡大したり、海外からの対日投資が増えれば、企業活動が活発になって将来の税収増が期待できる。企業活動を支援しなければ、雇用も増えない。
一一年度中に消費者物価上昇率をプラスにして安定的な物価上昇を目指すのも妥当である。ただし、デフレ脱却の鍵を握るのは日銀だ。政府はさらに一歩進めて、日銀との間で共通の物価安定目標を掲げるべきではないか。
東京湾岸地区などを念頭に規制緩和と税優遇策を導入する国際戦略特区を創設するのも、有効なアイデアだろう。日本からは外資系企業の撤退が相次いでいる。高い法人実効税率と規制に縛られて投資の魅力が薄れているからだ。
特区で成功すれば、その経験を起爆剤にして全国展開を図るべきだ。東京に限らず、思い切って希望地域はすべて認めて、成果を競わせてはどうか。政策展開にも競争原理を持ち込むべきだ。
むしろ、本当の問題は政府自身にある。これまでは各省がそれぞれの既得権益や縄張りを頑として譲らず、全体として最適化を目指す改革を阻んできた。
たとえば、法人税引き下げは経済界はもちろん経済産業省も賛成だが、財務省は財政難を理由に反対している。規制改革でも、戦略が掲げた幼稚園と保育園の一元化は自民党時代から必要性が叫ばれながら、所管する文部科学省と厚生労働省が縄張りを守ろうとして実現しなかった。
今回は基本的に産業政策を推進する経済産業省の主導で議論が進んだ。霞が関で意見調整が終わっているわけではなく、予算措置もこれからだ。どう実行するか、政治主導の真価が試される。
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