商工ローン大手・SFCGの元社長らが警視庁に逮捕された。民事再生手続き前に巨額資産を流出させた民事再生法違反などの疑いだ。親族会社を使った巧妙な資産隠しの全容解明を急いでほしい。
問題となったのは、SFCGが保有する不動産担保ローンの債権計約四百億円分を、元社長大島健伸容疑者の親族が経営する関連会社に無償譲渡したことだ。
ちょうど昨年二月に、同社が民事再生手続きをする前に当たり、この資産流出でSFCGの債権者に損害を与えた疑いが持たれている。まさに資産隠しと同然だ。
譲渡の契約日をわざと、さかのぼらせる虚偽の記録をした偽装工作の疑惑もある。警視庁に逮捕された元社長ら四人は否認しているというが、容疑が事実ならば、罪は重い。
同社の民事再生手続きは廃止され、現在は破産手続きがなされている。今年三月の債権者集会で、破産債権の総額は約二千九百億円と公表された。だが、同社の資産は約六十億円しか残っておらず、弁済のめどすら立たない状態だ。
原因は二〇〇八年の秋から、巨額資産がSFCGからどんどん親族の会社に流出していったためだ。債権ばかりでなく、元社長の長男の不動産会社に保有株式を譲渡したとされる。大島容疑者の役員報酬も、月額二千万円から九千七百万円に増額していたという。
流出資産を合計すると、二千六百七十億円にも達するというから驚く。破産管財人が言うように、民事再生法適用を申請した段階で、同社は「財産が何一つない“抜け殻”状態」だったことになる。悪質と映るのは当然だろう。
当時は金融危機の時期にも重なり、資金繰りに行き詰まっていたようだ。債務超過で経営破綻(はたん)する可能性を見越して、資産隠しに走ったのではないか。事件の経緯や実態の徹底捜査を望む。
SFCGの旧商号は「商工ファンド」である。銀行の貸し渋りで苦しむ中小・零細企業などを相手に融資し、急成長した。その陰では、過酷で強引な取り立ての実態があり、大きな社会問題ともなった。
一九九九年には大島容疑者が国会招致されたこともある。
「あくどいと言われるのは心外」と述べたが、その後、利息制限法を超える金利分の返還訴訟が相次ぎ、経営を揺るがせた。今回は破綻間際の「あくどさ」にメスが入れられたといえよう。
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