きのう閉幕した通常国会では、マニフェスト実現のために民主党内閣が提出した法案の成立が軒並み見送られた。背景にあるのは、夏の参院選を意識して、議論を避けようとする民主党側の姿勢だ。
政権交代後初の通常国会。民主党が昨年の衆院選で掲げた政策が国会での熟議を経て実現すると期待した国民は多かっただろう。
実際、数々の法案が提出され、子ども手当法や高校授業料無償化法は成立し、実現した。
しかし、国家戦略局をつくる政治主導確立法案、鳩山由紀夫前首相が「改革の一丁目一番地」と位置づけた地域主権改革関連法案は、いずれも衆院で継続審議に。官邸主導で省庁横断的な幹部人事を行う国家公務員法改正案は参院で廃案となった。
政府提出法案の成立は六十四件中三十五件にとどまり、成立率54・7%は通常国会としては現行憲法下で最低だ。
なぜ、こうなったのか。第一の理由は、鳩山氏と小沢一郎前民主党幹事長の「政治とカネ」の問題をめぐり、民主党側が国会での説明に消極的で、野党側の反発で審議が停滞したためだ。
審議促進よりも身内を擁護する姿勢には、参院選を控えて野党側に追及の機会を与えず、政権のイメージダウンを避ける思惑が働いていたと断ぜざるを得ない。
これでは「民主党らしい」政策の実現を自ら放棄したに等しい。
選挙優先姿勢は終盤国会で特に顕著になった。郵政改革法案の取り扱いをめぐる混乱は、その最たるものだ。
民主党は、今国会中に成立させるため、衆院での質疑を短時間で打ち切り、採決に踏み切った。
鳩山前内閣の支持率低迷で、日本郵政グループ労働組合などの組織票に頼ろうとしたものの、菅直人首相への交代で支持率が60%を超え、無党派層を取り込めると見るや、一転して成立を見送った。
参院でも採決を強行すれば、支持率を下げかねないし、野党に追及の場を与える国会延長は避けたいとはいえ、あまりにも選挙優先の議論逃避が過ぎないか。
国民生活に必要な政策実現は、議論を尽くした上で採決に付すのが基本だ。多少強引と思える国会運営もやむを得ない場合があるかもしれないが、選挙のために政策を実現させないのは本末転倒だ。
七月十一日投開票の参院選に向けた各党の公約が近く出そろうだろう。国会に臨む姿勢も、判断材料の一つに加えたい。
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